― 起業の科学で考える「根拠のある数字」 ―
対象書籍:
起業の科学
シリーズ:
起業本を「読んだつもり」で終わらせない実務レビュー
はじめに
事業計画書で、ほぼ確実に確認されるのが 数字 です。
特に次のような場面で、評価が分かれます。
「売上〇〇万円を見込んでいます」
この一文に対して、
- 「なぜその数字なのか」
- 「本当に実現できるのか」
を説明できないと、
計画全体の信頼性が一気に下がってしまいます。
『起業の科学』は、
数字の作り方を直接教える本ではありません。
しかし、数字に“根拠”を与える考え方としては、非常に有効です。
この記事では、
なぜ売上計画の数字が疑われるのか、
そして どうすれば評価される数字になるのか を整理します。
数字が疑われる事業計画書の典型パターン
売上目標が「希望」になっている
評価されにくい計画書では、
売上計画が次のような形で書かれています。
- 初年度売上〇〇万円
- 3年後に〇〇万円規模を目指す
しかし、
- どうやってその売上に至るのか
- どの前提条件で成立するのか
が書かれていないと、
数字は 単なる目標 として扱われてしまいます。
数字と事業内容がつながっていない
もう一つ多いのが、
- 事業内容は丁寧に書かれている
- しかし、数字は別枠で突然出てくる
という計画書です。
この場合、
「その事業内容で、なぜこの売上になるのか」
という疑問に答えられません。
『起業の科学』が数字づくりに役立つ理由
数字は「仮説の結果」です
『起業の科学』では、事業を次のように捉えます。
- 顧客仮説
- 課題仮説
- 提供価値の仮説
売上計画の数字は、
これらの仮説がすべて成立した結果として生まれるものです。
そのため、数字だけを先に決めても、
説得力は生まれません。
審査側が見ているのは「計算力」ではありません
融資や補助金の審査では、
- 計算が細かいか
- Excelがきれいか
よりも、
その数字に至る考え方が一貫しているか
が重視されます。
『起業の科学』の考え方を使えば、
この「一貫性」を作ることができます。
売上計画を「説明できる数字」に変える考え方
基本は「誰が × 何回 × いくら」です
売上計画の基本は、次の分解です。
- 誰が(顧客仮説)
- 何回(利用頻度・回転)
- いくら(単価)
この3つが、
顧客・課題・提供価値とつながって説明できるかが重要です。
なぜその単価なのかを説明できますか
単価は、
- 競合との比較
- 顧客が感じている価値
- 支払意思の検証
といった仮説から導かれます。
「相場が〇〇円だから」だけでは、
十分な説明とは言えません。
なぜその客数になるのかを説明できますか
客数についても、
- どのチャネルで集客するのか
- 月に何件程度が現実的か
- どの段階で増えていくのか
が説明できている必要があります。
顧客仮説が曖昧だと、
ここが必ず弱くなります。
融資と補助金での「数字」の見られ方の違い
融資の場合
融資では、数字に対して特に次の点が見られます。
- 保守的か、楽観的すぎないか
- 継続的に返済できる水準か
- 想定外が起きた場合の耐性
そのため、
- 少し控えめでも説明できる数字
- 下振れした場合の対応
が書けていると、評価は上がります。
補助金の場合
補助金では、
- 事業効果の大きさ
- 成長性
- 波及効果
も見られます。
ただし、
根拠のない急成長数字は評価されません。
仮説→検証→計画、
という流れが説明できていることが前提です。
数字が弱い計画書に共通する「抜け」
数字の前提条件が書かれていない
- どの仮説が成立した場合の数字なのか
- どこが崩れると影響が出るのか
これが書かれていないと、
数字は信用されません。
数字が「ゴール」になってしまっている
売上〇〇万円を達成すること自体が目的になっていると、
- どう行動するのか
- 何を改善するのか
が見えなくなります。
数字は 管理・判断のための指標 である必要があります。
まとめ|数字は「仮説の集合体」です
『起業の科学』の視点で見ると、
売上計画の数字は、
- 顧客仮説
- 課題仮説
- 提供価値仮説
がすべて成立した結果としての 仮説の集合体 です。
融資・補助金・事業計画書の場面では、
数字そのものよりも、
その数字に至る考え方が説明できるか
が評価を分けます。
数字を小さく見せる必要はありません。
説明できる数字にすることが何より重要です。
シリーズ総括(起業の科学・4本分解)
- 第1回:仮説検証編
- 第2回:顧客・課題編
- 第3回:事業構造・モデル編
- 第4回:数字・売上計画編
この4本は、
事業計画書を「書く前」に考えるべき思考整理です。
『起業の科学』は、
計画書の書き方ではなく、
計画書の中身を強くするための本です。
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