事業計画書の書き方 第14回:売上予測の立て方

はじめに

事業計画書を作成するうえで、もっとも注目される項目のひとつが「売上予測」です。売上予測は、単なる数字の羅列ではなく「どのように売上を積み上げていくか」という戦略の表現です。金融機関や投資家は、この予測が現実的かつ説得力を持っているかを必ずチェックします。したがって、根拠のない楽観的な予測は信頼を損ねる一方で、過度に控えめすぎる数字も「成長性に欠ける」と見られるリスクがあります。本記事では、売上予測を立てるための考え方と実践的な方法を解説します。


売上予測の基本構造

売上予測はシンプルに表すと、次の式で表せます。

売上高 = 客数 × 客単価 × 利用頻度

例えば飲食店なら「1日の来店客数 × 平均客単価 × 営業日数」、オンラインサービスなら「契約者数 × 月額利用料 × 継続月数」となります。この基本式に基づいて、自社のビジネスモデルに合わせて分解し、現実的に積み上げることが重要です。


売上予測の立て方ステップ

  1. ターゲット市場規模の把握
     まずは、自社の商品やサービスが対象とする市場規模を確認します。総務省統計局や業界団体のデータ、商圏調査の結果などを活用しましょう。市場規模を把握することで「どこまでシェアを獲得できるか」という現実的な上限を見積もれます。
  2. 顧客獲得数の見積もり
     次に、初年度に獲得できる顧客数を推定します。広告宣伝の計画や営業体制、口コミの広がり方などを根拠にすると説得力が増します。「月に50人の新規顧客を獲得できる。そのうちリピーター化する割合は30%」など、具体的な数値を組み立てることが重要です。
  3. 客単価の設定
     第13回で触れた価格設定に基づき、顧客1人あたりの平均購入額を見積もります。ここでは「基本料金+オプション」など、サービスの拡張性も織り込むと成長性を示しやすくなります。
  4. 利用頻度の見積もり
     同じ顧客がどのくらいのペースでリピートしてくれるかを想定します。飲食店なら月1回、美容室なら2カ月に1回、オンライン学習サービスなら週1回の利用など、業種特性を反映させましょう。
  5. 季節変動・成長率を考慮
     売上は常に一定ではありません。季節ごとに需要が変動したり、開業初期は認知度が低く徐々に売上が伸びるケースが多いです。したがって「1年目は右肩上がり」「繁忙期・閑散期を織り込む」といったシナリオを設定すると、よりリアルになります。

失敗しがちな売上予測のパターン

  • 根拠がない「希望的観測」
     「SNSで話題になれば売れるはず」「口コミが広がるだろう」といった曖昧な理由は避けましょう。必ず数値的な根拠を添えることが必要です。
  • 初月から満額稼働と仮定する
     開業したその日から満席やフル契約は現実的ではありません。徐々に顧客が増える過程を織り込む必要があります。
  • 競合を無視する
     市場には必ず競合が存在します。競合の動きや相場感を考慮せずに「シェア10%を取れる」と書くと、信頼性を損ねます。

具体例:学習塾の売上予測

例として、地域に開業する学習塾のケースを考えてみましょう。

  • 市場規模:商圏内に中学生が1,000人
  • 初年度の獲得目標:5%=50人
  • 月謝:20,000円
  • 継続率:80%

この場合、初年度の売上は以下のように計算されます。

50人 × 20,000円 × 12カ月 × 継続率80% ≒ 960万円

さらに「夏期講習や冬期講習で追加売上を見込む」「2年目以降は口コミで20%増加」などのシナリオを加えることで、より現実的で説得力のある売上予測になります。


事業計画書に書くときの工夫

売上予測を事業計画書にまとめる際は、以下のポイントを押さえると効果的です。

  • 表やグラフを使って見やすくする
     年度別・月別の売上推移を表や棒グラフで示すと、一目で成長のイメージを伝えられます。
  • 売上の根拠を必ず説明する
     単なる金額ではなく「◯◯人×△△円×□□回」のように式を分解することが大切です。
  • 複数のシナリオを提示する
     楽観的シナリオ、標準シナリオ、悲観的シナリオを用意すると、リスクに備えた現実的な計画であることを示せます。

まとめ

売上予測は、単なる数字合わせではなく「事業がどのように成長していくのか」を表す戦略的な要素です。市場規模、顧客数、単価、利用頻度を根拠に積み上げ、現実的かつ説得力のある数字を示すことが成功のカギとなります。事業計画書では、売上予測の裏付けを丁寧に説明し、金融機関や投資家に「この事業は実現可能である」と確信してもらえるよう工夫しましょう。

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この記事を書いた人

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