はじめに
起業において「資金繰り」は命綱です。どんなに優れた商品やサービスを持っていても、資金繰りが滞れば事業は継続できません。資金繰り計画とは、売上の入金時期と仕入・経費の支払時期を整理し、資金の過不足を予測して対策を立てるための設計図です。今回は、起業家が押さえておくべき資金繰り計画の基本的な考え方と作成手順を解説します。
なぜ資金繰り計画が必要か
資金繰り計画の重要性は、以下の3点に集約されます。
- 事業継続の安定性
売上が伸びていても、入金が遅ければ支払いに間に合わず資金ショートする可能性があります。資金繰り計画はこの「時間差リスク」を可視化します。 - 金融機関からの信用確保
融資を受ける際、金融機関は「返済能力」を重視します。資金繰り計画がきちんと作成されていれば、説得力が増し、融資の可能性が高まります。 - 経営判断の迅速化
将来の資金不足が予測できれば、仕入の調整や追加資金調達を前もって検討できます。これにより、突発的な資金ショートを回避できるのです。
資金繰り計画の基本構造
資金繰り計画は、基本的に「入金」と「出金」の流れを月単位で整理する表として作成します。
- 入金項目:売上入金、借入金の入金、自己資金投入、補助金・助成金の入金など。
- 出金項目:仕入代金、家賃、人件費、水道光熱費、外注費、返済金、税金など。
この入出金を一覧化し、月ごとに「当月末残高」がプラスかマイナスかを確認します。
作成手順(ステップごとに解説)
ステップ1:売上と入金時期の見積もり
売上は「請求日」と「入金日」がずれるのが通常です。
例:BtoB取引では「月末締め翌月末払い」が多く、1ヶ月以上のタイムラグが発生します。資金繰り計画では必ず入金予定月を記録することが大切です。
ステップ2:支出予定の洗い出し
固定費(家賃・人件費・通信費)と変動費(仕入・外注費)に分けて整理します。特に人件費や返済金は必ず毎月発生するため、優先的に支出予定に組み込みます。
ステップ3:初期投資と借入金の返済を反映
開業時に設備投資を行う場合、その支出時期を計画に入れます。また、借入金を利用する場合は返済スケジュールを加え、毎月のキャッシュアウトを確認します。
ステップ4:キャッシュフローの確認
入金−出金の差額を毎月計算し、累積残高を算出します。残高がマイナスになる月があれば、その前に資金調達を検討する必要があります。
具体例:飲食店開業の場合
たとえば、カフェを開業するケースを考えましょう。
- 開業資金:600万円(自己資金200万円、融資400万円)
- 月商予測:150万円
- 支出:家賃25万円、人件費50万円、仕入40万円、光熱費10万円、返済10万円
この場合、開業初月は宣伝費や仕入で支出が先行し、売上が安定するのは数ヶ月後です。資金繰り計画で「売上ゼロの月があっても支払に耐えられるか」をシミュレーションしておくことで、資金ショートを回避できます。
よくある失敗例
- 売上を楽観的に見積もる
「初月から黒字化できるはず」と予想しても、現実は時間がかかります。売上が遅れるリスクを織り込みましょう。 - 税金・社会保険料を忘れる
起業初年度は意外と見落としがちですが、2年目以降にまとまった税金が発生します。資金繰り計画に必ず反映させる必要があります。 - 借入返済の考慮不足
借入額ばかりに注目し、返済負担を軽視すると、毎月の資金繰りに行き詰まります。
資金繰り改善のポイント
資金繰りが厳しいときは、以下の改善策があります。
- 売上面:前払い契約の導入、定期課金モデル(サブスク化)
- 支出面:仕入条件の見直し、在庫圧縮、経費の固定費化
- 資金調達:つなぎ融資、補助金の活用、クラウドファンディング
資金繰りは一度計画を立てて終わりではなく、毎月実績と比較して見直すことが重要です。
まとめ
資金繰り計画は、事業計画書の中でも特に現実性が問われる部分です。作成のポイントは、売上の入金時期と支出のタイミングを正確に把握し、毎月の資金残高を予測すること。そして、赤字月をあらかじめ想定しておくことで、資金ショートという最悪の事態を避けられます。
起業家にとって資金繰り計画は「生存戦略そのもの」です。数字をシビアに見つめ、事業を継続させるための基盤をしっかりと築きましょう。
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