事業計画書の書き方 第23回:資金繰り表の作り方

はじめに

事業を継続していく上で、最も大切なのは「資金が回ること」です。どれだけ利益が出ていても、手元資金が不足して支払いができなければ、黒字倒産という事態を招きます。その予防策となるのが「資金繰り表」です。資金繰り表は、一定期間における資金の出入りを見える化し、資金不足を未然に防ぐための管理ツールです。本記事では、資金繰り表の基本的な考え方と作成方法、そして経営に活かすポイントについて解説します。


資金繰り表とは?

資金繰り表は、月単位や週単位で「入金」と「出金」を一覧化し、期末に残る現金残高を予測する表です。損益計算書が「利益」を示すのに対して、資金繰り表は「現金の動き」に焦点を当てます。

例えば、売掛金の回収が翌月になる場合、今月の売上は計上されても、今月の資金繰り表には現金として反映されません。こうした「利益と現金のズレ」を可視化できる点が、資金繰り表の最大の役割です。


資金繰り表の基本構成

資金繰り表は大きく次の3つの項目で構成されます。

  1. 収入(入金)
     売上の入金、借入金の入金、補助金・助成金の入金など。
  2. 支出(出金)
     仕入代金、人件費、家賃、水道光熱費、返済金、税金など。
  3. 資金残高
     収入から支出を差し引いた残高を期初残高に加え、期末残高を算出します。

この3つを月単位で整理していけば、1年間の資金繰り表が完成します。


作成手順

ステップ1:期初残高の設定

まずは月初時点の現金残高を明確にします。これは資金繰りの出発点となるため、正確な数字を把握しておく必要があります。

ステップ2:収入予定の記入

売掛金の入金時期、現金売上、融資実行予定などを反映させます。特に売掛金の回収サイトは要チェックです。

ステップ3:支出予定の記入

仕入代金の支払期日や毎月の固定費、返済スケジュールを記入します。税金や賞与など年に数回だけ発生する支出も忘れずに組み込みます。

ステップ4:残高計算

「期初残高+収入-支出=期末残高」という基本式で各月の残高を算出します。期末残高がマイナスになった場合は、資金ショートの可能性があるので要注意です。


具体例:小売業の場合

小さな雑貨店を開業したケースを想定しましょう。

  • 期初残高:200万円
  • 毎月の売上:100万円(うち現金売上50%、掛売50%)
  • 掛売の回収:翌月
  • 毎月の支出:120万円(仕入60万円、人件費40万円、その他20万円)

この場合、初月は売上100万円のうち50万円しか現金化されません。そのため支出120万円に対して収入が不足し、残高が減少します。翌月以降に掛売の回収が始まって安定しますが、開業直後は資金ショートリスクが高まることが分かります。


よくある失敗例

  1. 売上=即入金と誤解
    売掛回収のタイミングを考慮しないと、予想外の資金不足が起こります。
  2. 支払いの集中を見落とす
    賞与や税金など年数回の大きな支出を忘れると、一気に資金が枯渇します。
  3. 残高に余裕がない
    「ギリギリ黒字」でも現金残高が少ないと、ちょっとした遅延で資金ショートに陥ります。

資金繰り表を活かすコツ

  • 余裕資金を持つ:少なくとも2〜3か月分の固定費をカバーできる残高を維持する。
  • シミュレーションを行う:売上減少や支出増加のシナリオを織り込み、備える。
  • 更新を習慣化する:月次決算と合わせて資金繰り表を更新し、常に最新の状態を保つ。

まとめ

資金繰り表は、黒字倒産を防ぐための必須ツールです。利益計画と現金の動きを切り分けて管理することで、資金不足を事前に察知し、早めに対応できます。特に創業期は売上の入金と仕入の支払いが噛み合わず、資金ショートのリスクが高い時期です。だからこそ、資金繰り表を活用して、将来の現金残高をシミュレーションし、余裕を持った資金管理を行うことが事業成功のカギとなります。

「利益よりも現金残高を見よ」と言われるように、資金繰り表は経営者にとって最も頼りになる羅針盤です。毎月の資金繰りをしっかりと管理し、安定した経営基盤を築きましょう。

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この記事を書いた人

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