はじめに
「マーケティング」と聞くと、大企業の広告戦略やデータ分析を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、スモールビジネスにとってのマーケティングは、もっと身近で、もっとシンプルです。
静岡大学名誉教授の岩崎邦彦先生は、著書『スモールビジネスマーケティング』の中でこう述べています。
「小さな会社にとってのマーケティングとは、“顧客に選ばれる理由”をつくること」
つまり、限られた資源の中でどうやって「自分たちならではの価値」を生み出し、伝えるかがポイントなのです。
スモールビジネスの現実
中小企業や個人事業主は、広告予算も人材も限られています。
「良い商品を作れば売れる」と信じて頑張っても、なかなかお客さんに届かない。
こうした悩みは全国の小規模事業者に共通しています。
ところが、多くの経営者が「売上を上げる=新規客を増やす」と考えがちです。
しかし実際には、“顧客を深く理解すること” が、持続的な売上の鍵を握ります。
それがスモールビジネスマーケティングの出発点です。
顧客起点で考えるとは?
顧客起点とは、「お客様が何を求めているか」「どんな価値を感じるか」を軸に経営を組み立てる考え方です。
たとえばパン屋さんであれば、
「焼きたてでおいしいパン」だけではなく、
「朝に立ち寄って元気をもらえる場所」「子どもが笑顔になるお店」
といった“体験価値”を提供することで、お客様の心に残る店になります。
岩崎先生はこうも述べています。
「お客様の頭の中に“あなたの会社=○○な存在”という印象を築くことが、スモールビジネスマーケティングの目的である。」
大企業と小さな会社の決定的な違い
大企業は「資金」と「仕組み」で戦いますが、小さな会社は「人」と「想い」で勝負します。
広告よりも口コミ、データよりも会話、ブランドよりも信頼。
スモールビジネスの強みは、顧客と直接つながり、声を聴ける距離の近さ にあります。
例えば、ある美容室では「お客様の名前と前回の会話内容」を必ずメモしておき、次回来店時に自然に話題に出す工夫をしています。
この小さな気づかいが「この店は私を大切にしてくれている」という信頼につながり、結果的にリピート率を高めています。
マーケティング=特別なことではない
マーケティングとは“お客様を見つけて、関係を築き、長く喜んでもらう活動”です。
それは大きな会社だけのものではなく、個人事業でも今日からできる取り組みです。
- お客様が何を求めているかを観察する
- どんな場面で自社の商品を使っているかを知る
- 感謝のメッセージを伝える
こうした積み重ねが、最も実践的なマーケティング活動です。
まとめ ─ 小さな会社こそ「選ばれる理由」を
スモールビジネスマーケティングとは、派手な広告や複雑な分析ではなく、
「お客様に選ばれる理由」を明確にし、その価値を伝えること。
それが小さな会社の最大の武器になります。
次回は、「第2回:大企業と小規模事業のマーケティングの違い」で、
より具体的に“戦い方”の違いを掘り下げていきます。
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