はじめに
人は、情報の80%以上を「五感」で判断すると言われます。
つまり、ブランドの印象も“言葉”ではなく“体験”によって決まります。
岩崎邦彦先生は、スモールビジネスの講義の中でこう語っています。
「ブランドとは、顧客の記憶の中に残る“体験の総和”である。」
小さな会社ほど、顧客との接点はリアルで、距離が近い。
だからこそ、“五感を通じて心に残る体験”を設計することが、最大のマーケティングになるのです。
ブランド体験とは何か?
ブランド体験とは、お客様があなたの会社や商品に触れるすべての瞬間──
「見た」「聞いた」「感じた」印象の積み重ねです。
それは、店舗の雰囲気、包装の手触り、スタッフの声のトーン、香り、音楽──
一つひとつがブランドのメッセージを伝えています。
“ブランド体験”とは、無言のマーケティングである。
五感で伝えるブランドの5つの要素
1. 視覚(Visual)── 見た瞬間の印象
最初の印象は0.5秒で決まると言われます。
店舗やWebサイトの配色、照明、レイアウトが“世界観”を形づくります。
アメーラトマトも、赤と白を基調にしたパッケージで「上品さ」と「誠実さ」を表現しています。
スモールビジネスでも、「見ただけでその会社らしさが伝わるデザイン」を意識することが重要です。
2. 聴覚(Sound)── 雰囲気を支える音
人は音によって安心したり、不快になったりします。
カフェで流れるBGM、スタッフの声のトーン、機械音のリズム──
これらが「心地よさ」や「温かさ」を生みます。
例:
・地域カフェ → アコースティックの穏やかな音楽
・整骨院 → 静けさと落ち着きを大切に
・ECサイト → 開封動画の“音”を工夫して期待感を演出
音は、ブランドの“感情のトーン”を整えるツールです。
3. 触覚(Touch)── 手にした瞬間の信頼
手触りは、品質の印象を左右します。
パッケージや紙の質感、カップの重さ、レジ袋の素材──
こうした細部の“触感”が「丁寧さ」を伝えます。
アメーラトマトの包装も、厚みのあるクリアケースを使い、
“特別な贈り物”としての重みを演出しています。
スモールビジネスこそ、こうした“触感マーケティング”が効果的です。
4. 嗅覚(Smell)── 記憶を呼び覚ます香り
香りは、最も記憶に残りやすい感覚です。
店に入った瞬間の匂い、商品から漂う香り──それが“記憶のフック”になります。
たとえば、
- パン屋の焼きたての香り
- 理容室の整髪料の香り
- 花屋の清々しい香り
これらは言葉以上に「この店らしさ」を伝える力を持っています。
5. 味覚(Taste)── 経験としての“美味しさ”
食品業界に限らず、“味覚体験”はスモールビジネスでも応用できます。
例えば、体験セミナーでのドリンクサービス、試食・試飲、ノベルティのお菓子など。
“口にする瞬間”は五感の中でもっとも感情が動きやすい場面です。
アメーラトマトが成功したのも、「初めて食べた瞬間の驚き」が口コミにつながったからです。
ブランド体験をつくる3つの設計視点
- 感覚を揃える
→ 見た目・音・香りなどがバラバラだと世界観が壊れる。 - お客様の導線を考える
→ 店舗・Web・SNSなど、すべての接点を“体験の流れ”として設計する。 - 体験の“余韻”を残す
→ 「また行きたい」「また頼みたい」と思わせる余白を意識する。
ブランドとは、顧客が“再びその体験を求める理由”である。
まとめ ─ 五感で信頼を積み重ねるブランドへ
スモールビジネスにおけるブランド体験設計は、「高額な仕掛け」ではなく「小さな気づかい」の積み重ねです。
- 見た目で世界観を伝える(視覚)
- 音で雰囲気をつくる(聴覚)
- 手触りで品質を伝える(触覚)
- 香りで記憶を残す(嗅覚)
- 味で感情を動かす(味覚)
この“五感の統一”が、顧客の中に「この店は心地よい」「また会いたい」という感情を育てます。
「ブランドは、五感を通じて信頼を感じさせる“体験のデザイン”である。」
次回は、「第19回:リピートを生むブランド体験 ─ 顧客が戻ってくる仕組み」で、
一度の感動を“継続する関係”に変える方法を解説します。
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