はじめに
スモールビジネスの経営相談で最も多い悩みの一つが「値上げできない」という声です。
しかし、岩崎邦彦先生はこう断言します。
「小さな会社は“安さ”ではなく、“意味”で選ばれるべきである。」
価格とは単なる金額ではなく、「お客様が感じる価値の翻訳」です。
つまり、安くすることよりも、「なぜその価格なのか」を伝えることが、スモールビジネスの価格戦略の本質なのです。
価格は“メッセージ”である
お客様は、価格そのものよりも「価格の理由」に納得して購入します。
同じ1,000円でも、「特別に選ばれた素材だから」「職人が手作業で仕上げたから」と聞けば、印象がまったく違います。
アメーラトマトの価格が一般的なトマトの3倍以上でも支持されるのは、
「糖度と品質を徹底的に追求している」というストーリーがあるからです。
「価格は、理念を伝えるもう一つの言葉である。」
スモールビジネスに適した3つの価格戦略
1. コストではなく“価値”から決める
多くの小規模事業者は、「仕入れ+人件費+利益」で価格を決めます。
しかし、それでは「他社と比べられる価格」になってしまいます。
価値発想の価格設定では、次のように考えます。
- お客様が“どんな気持ちになる”商品か
- どんな“課題を解決する”サービスか
- どんな“体験価値”を提供しているか
たとえば、ヨガ教室なら「体を動かす時間」ではなく、「自分を整える習慣」を提供している。
この“価値”の視点で価格を設定することが重要です。
2. 「安く見せる」より「誇りを持って伝える」
値引きやキャンペーンは短期的な効果しか生みません。
むしろ、「この価格に意味がある」と誇りをもって伝えることが、顧客の信頼を生みます。
アメーラトマトの販売員は「甘いトマトです」ではなく、こう説明します。
「水を控えてストレスを与えることで、糖度を高めています。そのぶん、1株の収穫量は少ないんです。」
この説明を聞いたお客様は、“価格ではなく努力”に納得するのです。
スモールビジネスでも、
- 原材料へのこだわり
- 作り手の信念
- 手間を惜しまない姿勢
を丁寧に伝えることが、「誇りある価格」を守る鍵になります。
3. “比較されない土俵”で戦う
価格競争から抜け出すためには、他社と同じ基準で比べられない“独自の価値軸”を持つことが大切です。
たとえば、
- パン屋なら「地域の食文化を支える店」として存在意義を打ち出す
- 美容室なら「人を癒やす時間を売る」サロンとして差別化する
- コンサルタントなら「伴走型支援」「温かい寄り添い」を価値にする
つまり、“価格”ではなく“哲学”で選ばれるブランドになることです。
「高い」と言われたときの考え方
価格を上げると、必ず一部の顧客は離れます。
しかし、それは“自分の価値を明確にした証拠”です。
岩崎先生は言います。
「価格とは、顧客を選ぶためのメッセージでもある。」
安さを求める人を追わず、自社の価値に共感してくれる人と深くつながる。
それが、スモールビジネスにおける“持続可能な経営”の第一歩です。
まとめ ─ 「価格=信念」である
スモールビジネスにとっての価格戦略の核心は、次の3つです。
- コストではなく“価値”から決める
- 価格の理由を語る
- 比較されない“独自の土俵”をつくる
価格とは、「この仕事にどんな想いを込めているか」を示す経営のメッセージ。
アメーラトマトのように、
「この価格には理由がある」と胸を張って言えるブランドこそ、
お客様に長く愛される存在になります。
「安くする勇気より、“この価格で売る覚悟”がブランドをつくる。」
次回は、「第22回:スモールビジネスの顧客セグメント戦略 ─ “誰に売るか”で未来が変わる」で、
価格と並ぶ重要テーマ“ターゲット設計”について掘り下げます。
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