はじめに
「アメーラトマト」は、いまや日本を代表する高級トマトブランドのひとつです。
しかし、その出発点は、静岡の小さな農家の挑戦でした。
彼らが行ったのは、「たくさん作ること」ではなく、「少なくても良いものを徹底して作る」という選択。
まさに、“引き算の勇気”が生み出した成功例です。
「甘いトマトを作りたい」から始まった挑戦
アメーラトマトの誕生は、1990年代初頭。
「おいしいトマトを作っても、安く買い叩かれる」──そんな現実を変えるため、
静岡県の生産者たちは「味で勝負できるトマト」を目指しました。
しかし、当時の市場では「形・サイズ・色」が重視され、
味の良さは価格に反映されない時代。
そこで彼らは、“量より質”の方向に舵を切ります。
栽培方法の“引き算”
アメーラトマトの生産では、あえて水を絞るという特殊な栽培方法を採用しました。
植物は水が少ないと実を守ろうとして糖度を高めます。
この「ストレス栽培」により、一般的なトマトよりも糖度が2〜3度高い“フルーツのような味”を実現。
この手法は生産効率が下がり、1株あたりの収穫量も減ります。
しかし、それでも「味を最優先する」という信念を貫いたのです。
この“量の引き算”が、他にはない存在感を生みました。
“名前”と“物語”で価値を伝える
次に行ったのが、ネーミングとストーリーのブランディングです。
「アメーラ(Amela)」とはイタリア語で「愛でる」「甘い」などの響きを持ち、
覚えやすく、上品で柔らかい印象を与えます。
彼らは単に「糖度の高いトマト」ではなく、
“手間と愛情をかけて作った特別なトマト”という物語を発信しました。
包装・ロゴ・パンフレットも統一し、消費者に「ブランド体験」として伝えたのです。
“高くても買われる理由”をつくる
アメーラトマトは、1個あたりの価格が通常のトマトの3倍以上。
にもかかわらず、スーパーでは指名買いされる存在になりました。
その理由は、価格ではなく価値で競争したこと。
「他より高い」ではなく、「他にない味」「他にない想い」を提供したのです。
ここにも、岩崎先生が強調する“スモールビジネスの戦い方”があります。
「スモールビジネスは、価格ではなく“意味”で勝負する。」
教訓:減らして、絞って、深める
アメーラトマトの成功は、3つの“引き算”で説明できます。
- 量の引き算:たくさん作ることをやめ、味を極めた。
- 工程の引き算:効率よりも品質を優先した。
- 情報の引き算:メッセージを「甘い・濃い・特別」に絞った。
この「削る勇気」が、ブランドの一貫性を生み出しました。
まとめ ─ ブランドは「少ないからこそ強い」
アメーラトマトの物語は、小さな会社でもブランドをつくれることを教えてくれます。
それは、“量の競争”から降りて、“価値の競争”に挑んだからこそ。
スモールビジネスのブランドづくりは、派手な広告ではなく、
信念をもって「やらないこと」を選ぶところから始まる のです。
次回は「第7回:アメーラトマトに学ぶブランドづくり② ─ 名前・デザイン・価格の一貫性」で、
さらに深くブランディングの要素を分析していきます。
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