補助金入門 第11回:ものづくり補助金の活用事例(製造業/IT業界) ─ 最新要件から見た成功パターン

目次

はじめに

ものづくり補助金は、最新の第20・第21次公募要領で「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル市場開拓枠」などの枠が明確化され、補助上限・補助率・要件が改定されています。製造業やIT業界で補助金を活かすには、最新の要件に沿った事業設計と実行体制が重要です。今回は、製造業/IT業界の活用事例を通じて、「何を」「どのように」行うと成果が出ているかを整理します。


最新要件のポイント(製造業/IT業界に関係するもの)

まず事例紹介に入る前に、最新公募要領で特に製造業・IT業界者が押さえておくべきポイントを整理します。

これらを前提として、具体的な活用事例を見ていきます。


製造業の事例:高精度機械導入+外注設計による新製品開発

事業内容

ある中小の金属加工業者が、新たに高精度な部品加工を必要とする受注が増えてきたため、次の取り組みを行った:

  • 最新のCNC工作機械を導入し、加工精度を大きく向上。
  • 部品設計を外注し、新素材を用いた試作部品のプロトタイプを作成。
  • 加えて、品質検査用の3次元測定機を導入し、製品の寸法精度を保証できる体制を整備。

補助金活用ポイント

  • 製造業で「設備導入」が補助対象経費であり、機械装置等費を使うことで補助上限の恩恵を得られる枠を選択。
  • また、外注設計・試作開発を含めて事業計画を作成。これによって成果の見込み(新市場対応・付加価値額の向上)を示しやすくなった。
  • 賃金引上げや付加価値額増加の要件も計画に組み込み、加点要素として評価される申請とした。

成果

  • 試作部品の受注が確定し、新規取引先を複数獲得。
  • 精度の高い製品の納入により価格設定が向上。利益率改善。
  • 設備導入前に比べて納期短縮や不良品率低下など品質管理態勢の強化につながった。

IT業界の事例:業務システム刷新と海外市場向けウェブ展開

事業内容

ソフトウェア企業/ITベンダーが、国内顧客向けに業務管理システムを刷新する一方、英語対応のウェブサイトをリニューアルし、ASEAN地域向けのマーケティングを強化。

  • 内部業務管理プラットフォームをクラウドベースで再構築。
  • 多言語対応ウェブサイトを制作、翻訳+SEO対応。
  • 海外展示会・オンライン展示会への参加と国外広告宣伝も実施。

補助金活用ポイント

  • この事業は「グローバル市場開拓枠」が使える範囲。海外展開が明確であるため、グローバル枠の申請が可能。
  • システム構築費・ウェブ制作費・翻訳・宣伝費など対象経費が含まれる。試作品開発等ではないが、新サービス開発の性格を帯びていたため、「革新性」「付加価値向上」の観点でアピールができた。
  • 必須要件(付加価値・賃金等)を満たす事業設計。さらに、成果が見込める海外マーケット調査のデータを用意し、実現可能性を申請書で明確にした。

成果

  • 海外からの問い合わせが増加し、実際に数か国での販売契約を獲得。
  • 新システムの導入により業務効率が上がり、コスト削減と社員の作業負荷軽減に寄与。
  • ウェブサイト経由の売上比率が向上し、国内外の販路が拡大。

成功の共通要因

事例を通じて見える、製造業・IT業界でものづくり補助金を成功させる共通要因は以下の通りです:

  1. 設備投資を含んだ明確な「革新性」
    単なる改善ではなく、既存の市場や製品に対して明らかに差別化できる取り組みを含めている。
  2. 付加価値・賃金引上げなど要件をきちんと計画に組み込むこと
    要件を満たすことで補助金額・補助率・加点要素で有利になる。
  3. 証憑・見積書・外注契約・納期の裏付けがあること
    計画と実行が乖離しないよう、実施体制と証明できる資料を準備しておくこと。
  4. グローバル展開や海外顧客を視野に入れた戦略があること(IT業界など)
    グローバル枠を活用できそうな場合はその可能性をアピール。
  5. 申請タイミングと申請書の精度
    公募締切までのスケジュール管理を行い、商工会議所などの支援を得てレビューを重ねること。

まとめ

製造業・IT業界において、ものづくり補助金は大きな成長機会です。最新の公募要領では枠・補助上限・補助率・要件が明確化され、多様な業種で使いやすくなっています。ただし、「要件を満たさない」「計画が漠然としている」といった点では採択率が下がるため、上記の成功要因を参考に計画を整えることが重要です。

はじめに

「ものづくり補助金」(正式名称:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業・小規模事業者が新製品・新サービスの開発や設備投資、海外展開を通じて生産性を高めることを目的とした代表的な補助制度です。2025年時点での最新公募要領では、補助上限額・補助率・対象経費・要件等が見直されており、制度を活かすにはこれらを正確に把握することが重要です。本記事では、最新要件をもとに、制度の基礎を整理します。


最新の基本情報/変更点(2025年,第20・第21次公募等)

以下は最新版公募要領及び関連公式解説から確認できる、主なポイントです。

項目内容
補助対象枠主なものは 製品・サービス高付加価値化枠グローバル枠 の2つの枠。
補助上限額従業員数等によって異なる。例:製品・サービス高付加価値化枠で従業員5人以下なら750万円、6~20人なら1000万円、21~50人なら1500万円、51人以上なら2500万円など。グローバル枠では上限3,000万円のケース。さらに 大幅な賃上げ特例 を満たす事業者には、上限を100〜1,000万円程度上乗せ可能。
補助率小規模事業者や再生事業者は 2/3、その他中小企業は基本的に 1/2。最低賃金引き上げ等の特例を満たすと補助率が引き上げられる場合あり。
必須要件複数年(3〜5年)にわたる事業計画の策定と実施が求められる。付加価値額の増加、賃金増加、事業所内最低賃金の引き上げなどが基本要件。従業員数21人以上の場合、仕事・子育て両立等の追加要件もかかることがある。
対象経費機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウド利用費、原材料費・外注費・知的財産関連など。グローバル枠の場合は海外旅費・翻訳通訳費・広告宣伝費等も含む。
申請方式・提出形式電子申請が基本。公募回によって申請受付期間・締切が異なるため、公募要領のスケジュールを事前に確認すること。提出書類やPDFのページ数、形式の制約が明確化されてきており、形式不備は不採択リスク。従業員0名では申請不可等の明記あり。
返還義務特定の要件を満たさない場合、大幅賃上げ特例等で設定された上乗せ分について返還義務が生じるケースあり。基本要件未達成時の処置が公募要領で明示されている。

対象となる事業者と業種

  • 日本国内に本社および補助事業実施場所を有すること。実施場所が未設置の場合や契約・登記等で不備があると対象外。
  • 製造業・建設業・情報通信業・サービス業など幅広く対象。業種によって補助枠の名称・要件が異なることもあり。
  • 規模(従業員数)によって補助上限や特例の要件が変わる。小規模事業者の定義や特例要件を募集要領でしっかり確認すること。

活用のポイント

  1. 特例要件を満たせるかを検討する
     賃金引上げや最低賃金要件を満たすことで補助率アップや上限の上乗せが可能。これらを帳簿や台帳で整えておく必要あり。
  2. 必須経費(機械装置等)を含む計画を作る
     機械・設備の導入などの実質的な投資がない申請は認められない枠があるため、必ず少なくとも一つは設備投資を含めること。
  3. スケジュールを逆算して準備
     申請締切・交付決定日・実施期間までのスケジュールを把握し、見積書の準備・証憑管理・計画書のブラッシュアップなどを前もって作業する。
  4. 提出書類の形式・ルールを守る
     PDF提出のページ数制限や様式要件(フォーマット・順番・内容)など公募要領で細かく規定されている項目があり、見落としが採択可否に影響する。
  5. 他制度との重複や併用ルールも確認
     ものづくり補助金は他の補助金との併願は可能だが、同一経費の二重補助は不可。また、申請内容の重複(類似事業等)には制限やペナルティが設けられている。

よくある誤解と注意点

  • 補助上限額が「最大4,000万円」という表現があるが、それは特例や従業員規模・枠によるもので、全ての事業者・枠でその額が使えるわけではない。
  • 補助率1/2が基本という枠でも、特例要件を満たすと2/3になることがあるが、その要件が厳しく設定されていること。公開された公募要領の数値・条件を必ず確認する。
  • 実施期間内に納品・検収等が終わらないと対象にならない経費が多いため、発注・納期などの確認を甘くしない。
  • 従業員0名法人や未設立状態では実施場所等の要件で申請が認められないことが明記されているため注意。

まとめ

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者にとって、生産性向上・新サービス・海外展開など大きな成長機会を提供する制度です。最新公募要領では、補助上限・補助率・特例要件などが見直されており、これらを押さえて申請計画を立てることが肝要となります。

提出書類・申請方式・スケジュールを最新要領で確認し、準備を怠らない

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この記事を書いた人

「好きなことを仕事にする」起業家の挑戦を応援する、東京都港区の起業支援会社です。
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