― 起業の科学で考える「誰の課題か」 ―
― 計画性と柔軟性は両立できます ―
対象書籍:
起業の科学
シリーズ:
起業本を「読んだつもり」で終わらせない実務レビュー
はじめに
事業計画書の相談で、非常によく目にするのが次のような説明です。
「幅広い層をターゲットにしています」
「多くの人にニーズがあるサービスです」
一見すると間口が広く、魅力的に聞こえます。
しかし、融資や補助金の審査では、この説明が評価を下げる原因になることが少なくありません。
『起業の科学』では、事業づくりの出発点として
顧客と課題を仮説として明確にすることを重視しています。
この記事では、
顧客仮説が弱いとなぜ事業計画書が通らないのか、
そして どう整理すれば評価されるのか を実務目線で解説します。
顧客仮説が弱い計画書の典型パターン
「誰でも使える」は「誰にも刺さらない」
計画書でよく見られる表現に、次のようなものがあります。
- 性別・年齢を限定しない
- 幅広い業種・業態に対応
- 多くの人が抱える課題を解決
これらは一見プラスに見えますが、審査側からは、
- 本当に困っている人は誰か
- なぜその人が今、困っているのか
- なぜあなたの事業でなければならないのか
が見えません。
結果として、
事業の必然性が弱い計画書 と評価されてしまいます。
課題が「一般論」になっている
顧客仮説が弱い計画書では、
課題の書き方も抽象的になりがちです。
- 人手不足
- 集客が難しい
- コストが高い
これらは事実ですが、
「それは誰にとって、どの場面で問題なのか」 が書かれていないと、
課題として評価されません。
『起業の科学』が重視する「顧客×課題」の考え方
顧客は「属性」ではなく「状況」で捉えます
『起業の科学』では、顧客を次のように捉えます。
- 年齢・性別・職業
ではなく - どんな状況で、どんな不満や不便を感じているか
例えば、
- 30代女性
ではなく - 「開業3年以内で、集客に苦戦している個人事業主」
というように、
課題とセットで顧客を定義します。
課題は「困っている理由」まで掘り下げます
課題を整理する際に重要なのは、
- 表に見えている問題
- その背景にある理由
を分けて考えることです。
例えば、
- 集客できない
という課題の裏には、 - 何から手を付けてよいか分からない
- 外注すると高額で手が出ない
- 自分でやる時間が取れない
といった具体的な理由があります。
このレベルまで落とし込めているかどうかで、
事業計画書の説得力は大きく変わります。
顧客仮説を事業計画書にどう書くか
「誰の」「どんな課題か」を一文で言えるか
評価される計画書では、
次の2点が明確です。
- 誰の課題なのか
- その課題は何なのか
例えば、
本事業は、
開業から3年以内で、ITや集客に十分な時間を割けない個人事業主が抱える
「集客方法が分からず、試行錯誤に時間とコストを取られている」という課題を解決します。
このように、
顧客と課題が一体で説明されています。
なぜその課題が「今」問題なのかを書く
顧客仮説が強い計画書では、
- なぜ今、その課題が顕在化しているのか
- なぜ放置できないのか
が説明されています。
- 市場環境の変化
- 業界構造の変化
- 制度・技術の変化
と結びつけて説明できると、
事業のタイミングが明確になります。
融資と補助金での「顧客仮説」の見られ方
融資の場合
融資では、
- 本当にお金を払う顧客がいるのか
- 継続的な需要があるのか
が重視されます。
そのため、
- 顧客が具体的か
- 課題が切実か
という点が、
売上の再現性として評価されます。
補助金の場合
補助金では、
- なぜこの事業が必要なのか
- 社会的・地域的な意義があるか
が問われます。
顧客仮説が整理されていると、
- 誰の、どんな困りごとを解決するのか
- それがどのような効果につながるのか
を説明しやすくなります。
顧客仮説が弱いと数字も弱くなります
顧客が曖昧な計画書では、
- 客数の根拠
- 単価の理由
- 利用頻度の想定
が説明できません。
逆に、
- 顧客が明確
- 課題が具体的
であれば、
数字の前提条件も自然に説明できるようになります。
まとめ|顧客仮説は「事業の必然性」を示す土台です
『起業の科学』における顧客仮説は、
- マーケティングの話
- ペルソナ設定のテクニック
ではありません。
「なぜこの事業が存在するのか」を説明するための土台です。
融資・補助金・事業計画書の場面では、
誰の、どんな課題を解決する事業なのか
を、
一貫した言葉で説明できるかどうか が評価を左右します。
顧客仮説を具体化することは、
事業の方向性を狭めることではありません。
事業の強度を高めることにつながります。
次回予告
次回は、
「いいアイデアなのに評価されない理由は、事業構造にあります」
をテーマに、
- アイデア止まりの事業の共通点
- 起業の科学で考えるビジネスモデル整理
を解説します。
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