事業計画書の書き方 第10回:販売戦略の基本を押さえる

はじめに

起業にあたって事業計画書を作成するとき、多くの方が悩むのが「販売戦略」の部分です。商品やサービスの魅力をどう伝え、どう届け、どう売上につなげるか──ここが不明確だと、どんなに優れたアイデアでも現実的な事業にはなりません。販売戦略は、単に「売る方法」を書くのではなく、顧客と出会い、信頼を得て、継続的な関係を築くための仕組みそのものです。本記事では、販売戦略の基本と具体的な考え方を整理していきます。


販売戦略はなぜ必要か

事業計画書で販売戦略を説明するのは、金融機関や投資家に対して「このビジネスは本当に売上を上げられるのか?」を示すためです。どれだけ革新的な商品でも、売れなければ利益は生まれません。逆に、平凡な商品であっても優れた販売戦略があれば大きな成果を上げることができます。販売戦略は、事業の実現可能性を担保する重要な要素なのです。


販売チャネルの種類と特徴

販売戦略を考える際に欠かせないのが「どこで、どうやって売るのか」という販売チャネルの設計です。代表的なチャネルには以下のようなものがあります。

  1. 店舗販売
     飲食店や小売業で典型的な形態です。顧客と直接接点を持てる反面、立地や家賃、人件費といった固定費の負担が大きくなります。
  2. EC販売
     自社サイトやAmazon・楽天などのモールを活用する方法です。全国の顧客にリーチできる一方で、配送体制やネット広告の活用が不可欠です。
  3. 卸売・代理店
     既存の流通網を利用し、自社商品を広く届ける手法です。営業コストを抑えられますが、利益率が下がる点に注意が必要です。
  4. 直接営業(BtoB)
     法人向けサービスでよく見られます。契約単価が大きい一方で、成約まで時間がかかり、営業力の育成が重要となります。

自分の事業がどのチャネルに向いているのかを見極め、複数を組み合わせる場合は優先度を明確にしましょう。


販売戦略の立て方

具体的な販売戦略を設計する際には、以下の流れを意識すると整理しやすくなります。

  1. ターゲット顧客を明確にする
     「20代女性向け」「都心在住のシニア層」など、できるだけ具体的に絞り込むことが大切です。
  2. 顧客が購入しやすいチャネルを選ぶ
     ターゲットが普段どこで買い物をしているかを踏まえてチャネルを設計します。
  3. 販売後のフォローを設計する
     購入した顧客が満足し、再び購入したくなる仕組みを作ることで、長期的な売上につながります。

たとえば、ヨガ教室を開業する場合、近隣住民へのチラシ配布で初回体験を促し、来店後はLINE公式アカウントで定期的に情報を配信し、月謝制への移行を提案する──これが販売戦略の一例です。


事例から学ぶ販売戦略

具体例を見てみましょう。
ある飲食店では、オープン当初は通りがかりの顧客に依存していましたが、すぐに限界を感じました。そこで販売戦略を見直し、①ランチタイムにリーズナブルな価格で集客、②夜は単価の高いコース料理をSNSで宣伝、③常連客にはLINEで限定クーポンを配信、という流れを構築しました。その結果、昼夜で客層を分けて売上を安定させることに成功しました。

このように「どの層をどう集め、どうリピートにつなげるか」を意識することが、販売戦略の核になります。


よくある失敗と注意点

販売戦略でよくある失敗は「誰にでも売ろうとして、誰にも届かない」ことです。ターゲットを広げすぎるとメッセージが曖昧になり、広告費だけが膨らみます。また、販売チャネルを広げすぎるのも危険です。最初は一つのチャネルに集中し、手応えを掴んでから拡大する方が成功率は高いでしょう。


まとめ

販売戦略は、単に「商品を売る方法」ではなく、顧客とつながりを築き、継続的に売上を上げるための仕組みづくりです。事業計画書においては、ターゲット顧客・販売チャネル・販売後のフォロー体制を具体的に示すことが求められます。さらに、事例や数値を交えて説得力を高めれば、金融機関や投資家に「この事業は実現できる」と信じてもらえるはずです。

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この記事を書いた人

「好きなことを仕事にする」起業家の挑戦を応援する、東京都港区の起業支援会社です。
起業の道をともに歩むパートナーとして、豊富な実務経験と支援実績をもとに、実践的な伴走支援を行っています。
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