事業計画書の書き方 第22回:資金調達計画の立て方

はじめに

事業計画書の中でも、資金調達計画は極めて重要な位置を占めます。どれだけ優れたビジネスモデルでも、資金不足で頓挫してしまう例は少なくありません。資金調達計画は、必要な資金をどのように調達し、返済や投資回収をどのように行うかを示すものです。特に創業期は自己資金と借入金のバランスをどう設定するかが、信用力や将来の資金繰りに直結します。本記事では、資金調達計画の基本的な考え方と具体的な作成方法、注意点について解説します。


資金調達計画の目的

資金調達計画を作成する目的は大きく3つあります。

  1. 必要資金の明確化
     開業資金や運転資金を具体的に数値化することで、調達額の根拠を明確にできます。
  2. 調達手段の整理
     自己資金・借入・補助金・投資など、どの方法で調達するかを整理することで、現実的な計画を示せます。
  3. 返済可能性の裏付け
     金融機関は「貸したお金が返ってくるか」を重視します。損益計画や資金繰り計画と整合性を取ることで、返済可能性を説明できます。

必要資金の分類

資金調達計画では、まず必要な資金を「設備資金」と「運転資金」に分けて整理します。

  • 設備資金:店舗の内装工事費、機械・設備の購入費、保証金など、開業時に一度だけ発生する資金。
  • 運転資金:仕入代金、人件費、家賃、広告宣伝費など、事業を継続するために毎月必要となる資金。

一般的には「開業に必要な設備資金」+「少なくとも3〜6か月分の運転資金」を合算して、必要資金総額とします。


資金調達の方法

必要資金が見えたら、次に調達手段を検討します。代表的な方法は以下の通りです。

  1. 自己資金
     創業者本人が用意する資金です。金融機関は「自己資金がどれくらいあるか」を非常に重視します。一般的に必要資金の2〜3割程度を自己資金で用意していると評価が高まります。
  2. 金融機関からの借入
     日本政策金融公庫や信用金庫などの創業融資が代表例です。返済計画と利益計画が整合しているかが審査のポイントとなります。
  3. 補助金・助成金
     国や自治体が用意する補助金・助成金を活用することで、自己資金の負担を軽減できます。ただし後払いが多いため、つなぎ資金の確保が必要です。
  4. 出資・投資
     ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から資金を得る方法です。返済義務はありませんが、株式の一部を渡すことになるため経営権への影響を考慮する必要があります。

作成手順

ステップ1:必要資金の算出

事業計画書に基づき、開業に必要な設備資金と運転資金を一覧化します。見積書や契約書を添付すると説得力が増します。

ステップ2:資金調達手段の割り当て

必要資金総額を「自己資金」「融資」「補助金」などに振り分けます。例として、必要資金1,000万円に対し、自己資金300万円・融資600万円・補助金100万円といった形です。

ステップ3:返済計画の設定

融資を受ける場合、返済期間・利率を想定して月々の返済額を算出します。返済額が損益計画の利益水準で十分に賄えることを確認することが大切です。


具体例:飲食店の場合

例えば、カフェを開業するケースを想定します。

  • 必要資金:800万円(設備資金500万円、運転資金300万円)
  • 自己資金:200万円
  • 借入金:500万円(公庫融資、金利2.0%、返済期間7年)
  • 補助金:100万円

この場合、月々の返済額は約6万円となり、損益計画で営業利益が毎月15万円見込めていれば、返済可能と判断されます。


よくある失敗例

  1. 自己資金がゼロ
    「すべて借入で賄う」という計画は金融機関の評価が低くなります。
  2. 返済能力を超えた借入
    利益計画と返済額の整合性が取れていないと、資金ショートを起こす危険があります。
  3. 補助金を当てにしすぎる
    採択される保証はなく、入金まで時間がかかるため、補助金はあくまでプラスアルファと考えましょう。

資金調達計画を魅力的にする工夫

  • 根拠資料を準備:見積書、契約書、過去の売上データなど。
  • 複数シナリオを用意:楽観・標準・悲観の3パターンを示すと説得力が増します。
  • 自己資金の蓄積過程を説明:コツコツ貯蓄した履歴や副業収入などを示すと信頼度が高まります。

まとめ

資金調達計画は、事業を「夢物語」から「実現可能なプロジェクト」に変える大切な要素です。必要資金を正確に見積もり、現実的な調達手段と返済計画を組み合わせることで、金融機関や投資家の信頼を得られます。さらに、複数のシナリオを準備しておくことで、不測の事態にも対応できる柔軟性を備えた計画となります。

「資金は血液」と言われるように、資金がなければ事業は動きません。計画的に資金調達を進めることが、事業成功への第一歩となります。

「起業に関心がある」方へ

起業を考えているが迷っている。具体的にどうしたらよいかわからない。。。

そんなお悩みに、アドバイザーとして一緒に伴走します。

必要なのは、「少しの整理」と「最初の一歩」です。

▶︎ 迷っているあなたへ:無料相談をご活用ください

私は港区で日々、創業者の伴走支援を行っています。

もし「自分の想いをどう形にすればいいか分からない」「制度の使い方がよくわからない」といった不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「好きなことを仕事にする」起業家の挑戦を応援する、東京都港区の起業支援会社です。
起業の道をともに歩むパートナーとして、豊富な実務経験と支援実績をもとに、実践的な伴走支援を行っています。
クライアントの夢の実現に向けて、専門性と創造性を活かしながら全力でサポートいたします。

目次