はじめに
創業計画書を作成する際に、金融機関や支援機関から必ずチェックされるのが「自己資金比率」です。自己資金とは、起業家自身が事業に投じる現金資産のこと。融資や補助金と異なり、返済不要であり、最も確実な資金源です。自己資金の比率が低すぎると「本気度が足りないのではないか」「返済に依存しすぎているのではないか」と疑問を持たれることになります。本記事では、自己資金比率の考え方とその目安、準備の方法について解説します。
自己資金比率とは何か
自己資金比率とは、事業に必要な資金の総額のうち、自己資金が占める割合のことを指します。
- 例:開業に必要な資金総額が1,000万円で、自己資金が300万円の場合
自己資金比率 = 300万円 ÷ 1,000万円 = 30%
この割合が高ければ高いほど、金融機関や投資家は「この事業は本人の覚悟が強い」と評価します。一方で、自己資金が少なすぎると、計画の実現性や返済能力に疑問が残ります。
金融機関が重視する理由
銀行などの金融機関が自己資金比率を重視するのは、以下の3つの理由があります。
- 起業家の本気度の指標
自分の資産を投じているかどうかは、事業への覚悟を測る物差しです。 - リスク分散の観点
全額を借入でまかなう場合、返済負担が重くなり、資金繰り悪化のリスクが高まります。自己資金を投入することで、返済依存度を下げられます。 - 資金計画の健全性
自己資金比率がある程度確保されていれば、初期赤字や予想外の支出に耐えられる「余力」があると判断されます。
自己資金比率の目安
実際にどれくらいの比率が必要かは業種や規模によって変わりますが、一般的な目安は以下の通りです。
- 最低でも 1/10(10%)以上:これ以下だと、ほとんどの金融機関で融資審査が厳しくなります。
- 望ましい水準は 1/3(30%)前後:多くの金融機関が安心して融資できる水準です。
- 自己資金比率が高いほど有利:50%を超えるような場合は、金融機関側も融資に前向きになります。
例えば、飲食店で初期投資が800万円必要だとすれば、少なくとも80万円以上、理想的には200〜300万円程度の自己資金を用意しておきたいところです。
自己資金の準備方法
では、実際に自己資金をどう準備すればよいのでしょうか。
- 日常的な貯蓄
毎月一定額を積み立てることが基本です。創業を意識した時点から準備を始めるのが理想です。 - 副業収入の活用
副業やアルバイトなど、本業以外の収入を自己資金に回すことで短期間で増やすことが可能です。 - 不要資産の売却
自家用車や使っていない不動産、保有している株式などを整理し、現金化することで資金力を高められます。 - 家族からの支援
贈与や出資という形で家族から援助を受けるケースもあります。ただし、この場合は「借入ではなく自己資金」として認められるかどうか、金融機関に事前確認が必要です。
注意すべきポイント
自己資金については、単に金額があるだけでは不十分です。
- 通帳での証明が必要
金融機関は自己資金の出どころを必ず確認します。通帳に「継続的に貯めてきた履歴」が残っているかが重要です。直前に大きな金額を入金すると「借りてきたお金ではないか」と疑われる可能性があります。 - 見せ金はNG
一時的に借りてきて預け入れた資金は「見せ金」と呼ばれ、金融機関にはすぐに見抜かれます。信頼を失う行為なので避けるべきです。
自己資金比率が低い場合の対応策
「自己資金が十分に用意できないから起業できない」という声も多いですが、いくつかの対応策があります。
- 小さく始める
最初から大きな投資をせず、小規模で始めて実績を作り、後から融資を受けて拡大する。 - 補助金・助成金の活用
補助金は後払いが多いため、当初の資金は必要ですが、トータルで自己資金負担を軽減できます。 - 共同経営者を募る
パートナーと出資比率を分け合うことで、実質的に自己資金比率を高められます。
まとめ
自己資金比率は、創業計画の信頼性を左右する重要な要素です。
- 10%未満では厳しい
- 30%程度あれば安心感が増す
- 通帳で証明できる資金であることが必須
というのが大きな目安です。
「自己資金が十分にないから起業できない」と悲観するのではなく、計画を小さく始めたり、準備の期間を設けたりすることで、現実的な解決策は見えてきます。金融機関や支援機関から信頼される事業計画を作るために、自己資金の準備は避けて通れないステップです。
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