事業計画書の書き方 第26回:補助金・助成金の活用方法と起業家の注意点

はじめに

起業準備にあたり、多くの方が関心を持つのが「補助金・助成金の活用」です。これらは国や自治体、支援機関が提供する資金で、返済不要という大きなメリットがあります。しかし、「もらえるお金」と誤解されやすく、実際には事業計画書の精度や実行力、そして支出のタイミングが重要になります。本記事では、補助金・助成金の基本的な仕組みと活用のポイント、注意点について整理します。


補助金と助成金の違い

まずは両者の定義を明確にしておきましょう。

  • 補助金
     国や自治体が予算を組んで実施する制度。公募期間が定められており、審査を経て採択される必要があります。競争性が高く、採択率は制度によって20〜50%程度に留まります。代表例は「小規模事業者持続化補助金」や「ものづくり補助金」など。
  • 助成金
     厚生労働省や自治体が中心に実施する制度。一定の条件を満たせば比較的受けやすく、採択率も高めです。たとえば雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金、トライアル雇用助成金など)は、従業員の雇用環境改善を目的としています。

いずれも返済不要ですが、「事前に計画を立て、支出後に申請して精算する」という仕組みである点は共通しています。


補助金・助成金を活用するメリット

  1. 資金負担を軽減できる
     設備投資や広告宣伝費など、起業直後に大きな出費が発生する場面で自己資金の負担を和らげます。
  2. 事業計画のブラッシュアップにつながる
     申請書には明確な根拠や数値計画が求められるため、計画を練り直す機会となります。
  3. 信頼性の向上
     公的機関から採択されることは、顧客や金融機関に対する「信頼性の証明」にもなります。

活用する際の注意点

補助金や助成金を効果的に活用するためには、以下の点に留意する必要があります。

  1. 後払い方式が多い
     多くの場合、対象経費をいったん自己資金で支払い、その後に精算される仕組みです。したがって資金繰りに余裕がないと活用が難しくなります。
  2. 対象経費が限定される
     補助金・助成金はすべての費用に使えるわけではありません。例えば「飲食代」「家賃」などは対象外となることが多く、主に広告宣伝費・設備費・人件費等が対象です。
  3. 申請・報告の手間がかかる
     見積書、請求書、領収書を揃え、細かく報告書を提出する必要があります。事務処理を軽視すると不採択や返還リスクが発生します。

よく使われる補助金・助成金例

  • 小規模事業者持続化補助金
     小規模事業者が販路開拓を行うための費用を補助。チラシ作成、WEBサイト構築、展示会出展など幅広く利用可能。
  • ものづくり補助金
     新商品や新サービスの開発を支援。製造業に限らずITやサービス業にも適用可能。補助率は最大2/3。
  • 創業助成金(自治体ごと)
     東京都や地方自治体が独自に実施する制度。創業直後の販促費や人件費を支援。採択されれば数百万円規模の支援も。
  • 雇用関係助成金
     新規雇用や従業員のスキルアップを支援する制度。比較的利用しやすく、起業後の人材採用フェーズで役立ちます。

申請の流れ

  1. 公募要領を入手し、対象要件や対象経費を確認する
  2. 事業計画書を作成し、必要書類を添付して申請する
  3. 採択後、対象経費を自己資金で支払い、証憑を揃える
  4. 実績報告を提出し、認定されると補助金・助成金が振り込まれる

成功のポイント

  • 早めに情報収集する
     公募期間は1〜2か月程度と短いことが多いため、日頃から情報をチェックしておくことが大切です。
  • 事業計画を具体的にする
     「誰に」「どのように」「どれくらい売るのか」を数値で示すと採択されやすくなります。
  • 専門家に相談する
     商工会議所、中小企業診断士、支援機関の窓口などを活用すると、申請の精度が高まります。

まとめ

補助金・助成金は、起業家にとって強力な資金調達手段です。ただし、

  • 後払い方式であること
  • 対象経費が限定されること
  • 事務処理に手間がかかること

といった注意点を理解しておかなければ、かえって資金繰りを圧迫する可能性もあります。

「補助金があるから起業する」ではなく、「起業計画を実行する中で補助金を上手に活用する」というスタンスが成功の秘訣です。信頼できる支援機関や専門家と連携しながら、自分の事業に合った制度を選び、賢く活用していきましょう。

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この記事を書いた人

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