はじめに
「うちの会社の強みって何だろう?」
経営相談の現場で、最も多く聞かれる質問のひとつです。
商品もサービスも良いのに、なぜかお客様に魅力が伝わらない──。
その原因の多くは、「自分の強みを自分で気づけていない」ことにあります。
スモールビジネスにおける“強み”とは、他社よりも優れていることではありません。
岩崎邦彦先生はこう述べています。
「スモールビジネスの強みとは、競争相手との比較ではなく、“お客様にとって意味があること”である。」
つまり、「他社よりすごい」ではなく、「お客様にとってありがたい」ことが、本当の強みなのです。
強みとは「お客様が感じる価値」
多くの経営者が「自分たちの得意分野」を強みだと考えます。
しかし、強みを決めるのはお客様です。
たとえば、ある小さな理容室の店主は、「特別な技術なんてない」と言っていました。
しかしお客様に聞いてみると、「いつも静かに過ごせる」「予約が取りやすい」「話を聞いてくれる」など、“心地よさ”という強み が評価されていたのです。
このように、自分では「当たり前」と思っていることが、お客様にとっては「他にはない魅力」になっている場合が多いのです。
強みを見つける3つの視点
1. お客様の声を聴く
まず、顧客からの言葉を丁寧に拾い上げること。
「なぜうちを選んでくれたのか」「どこが気に入っているのか」を聞いてみましょう。
アンケートや口コミだけでなく、日々の会話の中にこそ“真の強み”が隠れています。
例:「近くにもっと安い店があるけど、あなたのところは丁寧だから通っている」
この言葉には、「価格」ではなく「信頼」が強みであることが示されています。
2. 続けてきたことの中にある
強みは“努力して作るもの”ではなく、“続けてきたこと”の中に自然と現れます。
「10年続いている」「同じ商品を出し続けている」──これ自体が他社に真似できない強みです。
たとえば、20年以上同じメニューを守る喫茶店では、常連客が“安心して戻って来られる場所”として支持されています。
変わらないことが、時に最大のブランドになります。
3. 他社がやらないことを大切にする
スモールビジネスの世界では、「他社がやっていないこと」にこそチャンスがあります。
それは奇抜なことではなく、“面倒でも丁寧にやる”という姿勢のことです。
例:
・1人ひとりに合わせた手書きメッセージ
・納品後のフォロー電話
・季節ごとのお礼状
こうした“手間のかかること”は、大企業には真似できません。
それが小さな会社の最大の武器になります。
強みを言葉にする
見つけた強みは、言語化しなければ伝わりません。
「なんとなくいいお店」では、お客様の記憶に残らないからです。
言葉にするコツ:
- お客様の声をそのまま引用する
→ 「安心できる」「丁寧」「親切」などリアルな言葉を使う - 短く、覚えやすくする
→ 「丁寧な対応の〇〇」「安心して通える△△」 - 感情を動かす表現を選ぶ
→ 「心がほっとする」「大切にされていると感じる」
まとめ ─ 強みは“現場の中”にある
スモールビジネスの強みは、遠くに探しに行くものではありません。
日々の接客、顧客の声、そして自分たちが大切にしていることの中にあります。
「強みとは、他人から見た自分の“当たり前”である。」
自分では気づかない当たり前を、顧客の視点で見直すこと。
それが、スモールビジネスマーケティングの最初の一歩です。
次回は「第5回:“引き算の勇気”でブランドをつくる」で、
強みをさらに磨くための“減らす発想”について解説します。
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