はじめに
ブランドとは、「覚えやすい名前」や「おしゃれなロゴ」だけで成り立つものではありません。
お客様の心に残るブランドには、見た目・言葉・価格・体験の一貫性 があります。
アメーラトマトが成功した背景にも、この“全方位の統一感”がありました。
それは単なる見た目の工夫ではなく、経営の意思を貫いた結果です。
名前の力 ─ 響きで伝えるブランドの姿勢
「アメーラ」という名前には、特別な設計意図がありました。
トマトといえば「野菜」「健康」「安い」といったイメージが一般的ですが、
アメーラはそこに「上品さ」「愛情」「特別感」を加えました。
イタリア語の響きが持つ柔らかさと高級感。
短くて覚えやすく、女性にも親しみやすい。
このネーミングが、商品コンセプトの核である「愛される甘さ」を象徴しているのです。
名前は、ブランドの最初のメッセージ。
響きひとつで、“誰に向けたブランドか”が伝わる。
スモールビジネスも、「誰に・どんな印象を持たれたいか」から逆算して、
名前づくりを戦略的に考えることが重要です。
デザインの一貫性 ─ 見た目で信頼を築く
アメーラトマトは、パッケージ・ロゴ・色使いにも統一感があります。
白と赤を基調に、透明パックで“自信のある中身”を見せる設計。
シンプルなのに上品──これがブランドの信頼感を高めました。
さらに、販売店ごとにデザインを変えず、全国どこでも同じ見た目に統一。
これにより、「アメーラ=この見た目」という記憶が消費者の中に定着しました。
岩崎邦彦先生は、講義の中でこう指摘しています。
「一貫性はブランドを“約束”に変える。お客様は“変わらないこと”に安心する。」
デザインの統一は見栄えのためではなく、“信頼を守る仕組み”なのです。
価格の一貫性 ─ 「高い」ではなく「誇りのある価格」
アメーラトマトは、一般的なトマトの3倍の価格で販売されています。
それでも売れるのは、価格が“ブランドメッセージの一部”になっているからです。
彼らは「値下げ競争」には決して参加しません。
代わりに、「なぜこの価格なのか」を明確に伝えます。
・手間を惜しまない栽培方法
・糖度の測定と選別の徹底
・品質を保つ流通体制
この“理由のある価格”が、消費者にとっての信頼につながっています。
高価格=高品質ではなく、「理由のある価格」が信頼を生む。
スモールビジネスでも、「なぜこの価格なのか」をお客様に説明できることが、
ブランドの一貫性を支える大切な要素になります。
ストーリーと体験の統一
アメーラトマトの物語は、「甘くて特別なトマト」だけではありません。
・農家が手間を惜しまず栽培する姿
・出荷のたびに糖度を測定する誠実さ
・消費者に「感動」を届ける想い
そのすべてが、一貫して“愛でるトマト”という世界観を支えています。
スモールビジネスも同じです。
SNS、接客、チラシ、商品デザイン──それぞれの接点で語るメッセージが揃っているかが大切です。
ブランドとは「一貫した体験の集合体」なのです。
まとめ ─ 一貫性が“信頼”を生む
アメーラトマトの成功の本質は、「おしゃれなトマト」ではなく、
“言葉・デザイン・価格・体験のすべてを一つに貫いたこと”にあります。
スモールビジネスが学ぶべきは、
- 見せ方ではなく、「何を大切にしているか」を明確にすること
- 一度決めた価値をぶらさず、続けること
- 価格もデザインも、「想いを伝える手段」であること
一貫性は、時間をかけて信頼を積み重ねる唯一の方法です。
次回は「第8回:アメーラトマトに学ぶブランドづくり③ ─ ファンを生む発信の力」で、
ブランドを広げる“伝え方”の工夫を見ていきます。
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