はじめに
「うちの商品は良いのに、なぜ広まらないのだろう?」
多くの小規模事業者が抱くこの悩み。
実は、“発信の仕方”に問題があるケースがほとんどです。
アメーラトマトも、最初から有名だったわけではありません。
少量生産・高価格のトマトをどうやって認知させるか──。
彼らが選んだのは、「広く宣伝する」ではなく、「深く伝える」という戦略でした。
“発信”は広告ではなく“対話”である
アメーラトマトの発信の特徴は、「宣伝」ではなく「共感を育てる物語」でした。
広告コピーで「甘い」「おいしい」と叫ぶのではなく、
生産者が自らの言葉で「どんな想いで育てているか」を語りました。
SNSやパンフレットでは、
・トマトに与える水をどれだけ絞っているか
・糖度を測る工程の写真
・農家の笑顔や畑の風景
──こうした“舞台裏”を丁寧に伝える発信を続けたのです。
これが消費者に「本当に手間をかけている」「信頼できる」という印象を与え、
結果的にファンを増やしていきました。
「発信とは、説明ではなく“信頼づくり”である。」
─ 岩崎邦彦『スモールビジネスマーケティング』より
“想いの見える化”がブランドを育てる
スモールビジネスの発信では、「完璧さ」よりも「人間らしさ」が大切です。
アメーラトマトの生産者たちも、
「時には天候で糖度が上がらないこともある」と正直に伝えていました。
この“弱みを隠さない姿勢”が、逆に信頼を生んだのです。
お客様は「完璧な企業」ではなく、「誠実に努力する人」に共感します。
人は“成功”ではなく、“姿勢”に共感する。
あなたのビジネスでも、商品の裏側や、日々の小さな工夫を発信してみてください。
それが“共感の接点”になります。
ファンを生む発信の3原則
1. 誰に伝えるかを明確にする
発信の第一歩は「誰に届けたいか」を決めること。
アメーラトマトは、万人向けではなく「食の価値にこだわる層」をターゲットにしました。
その結果、少数でも“理解してくれる顧客”に届いたのです。
2. 同じメッセージを繰り返す
「甘くて特別なトマト」という言葉を何度も使い、すべての発信を統一しました。
同じ言葉を繰り返すことで、消費者の記憶に“刷り込まれる”のです。
ブランディングにおいては、“変えない勇気”が何より大切です。
3. お客様の声を発信に取り入れる
顧客の感想や口コミをそのまま発信することで、第三者の信頼が加わります。
「うちの商品は良い」ではなく、「お客様がこう言ってくれた」と伝えることが、
最も強力な説得力を持ちます。
“静かな熱量”がブランドを支える
アメーラトマトの発信は、決して派手ではありません。
けれども、誠実で一貫していました。
テレビCMを打たなくても、ファンが自らSNSで写真を投稿し、口コミが広がったのです。
広告よりも、ファンの投稿がブランドを育てる。
スモールビジネスにとっての理想の発信は、“静かな熱量”を持つこと。
毎日少しずつでも、「自分たちの想い」「お客様の喜び」を積み重ねていくことが、
ブランドの信頼を確実に育てていきます。
まとめ ─ 発信とは「ブランドを磨く行為」
アメーラトマトの発信戦略は、次の3点に集約されます。
- 広告ではなく、“対話”を重ねる
- 完璧さではなく、“誠実さ”を伝える
- 同じメッセージを一貫して発信する
スモールビジネスは、派手なPRよりも“想いの一貫性”で勝てます。
日々の投稿、会話、チラシ──その一つひとつがブランドを磨く行為なのです。
次回は、「第9回:アメーラトマトに学ぶブランドづくり④ ─ 継続が生む信頼」で、
“ブランドを長く続けるための仕組みと姿勢”を見ていきます。
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