はじめに
「うちのお客様は、ほとんど紹介なんです。」
これは、長く続くスモールビジネスに共通する言葉です。
一方で、「広告を出しても反応が薄い」「SNSのフォロワーは増えたけど売上は変わらない」という声もよく聞きます。
実は、スモールビジネスが本当に頼るべきなのは、“広告”ではなく“信頼の連鎖”──つまり口コミと紹介なのです。
岩崎邦彦先生もこう語っています。
「スモールビジネスは“語られるブランド”を目指すべきである。」
口コミは“信頼の証”である
口コミの力は、単に「無料で広がる宣伝」ではありません。
それは、“信頼を可視化する証”です。
人は、企業の広告よりも「知人の言葉」を信じます。
しかも、口コミは“お金では買えない評価”として受け取られるため、他のどんなマーケティングよりも強い影響力を持ちます。
アメーラトマトも、広告より口コミで広がったブランドです。
「一度食べたら他のトマトに戻れない」「贈り物にしたらとても喜ばれた」──そんなリアルな声が、次の購入者を生みました。
口コミが生まれる3つの条件
1. “感情が動く体験”をつくる
人は“感動”したときに誰かに話したくなります。
つまり、口コミの起点は「心が動いた瞬間」にあります。
たとえば、
- 想像以上のサービスを受けた
- スタッフの気配りに驚いた
- 商品に“物語”を感じた
これらはすべて、“語りたくなる体験”です。
スモールビジネスは大規模広告よりも、“小さな感動”を積み上げることに注力すべきです。
2. “語りやすい言葉”を用意する
口コミは、「お客様が他人に紹介するときの言葉」で決まります。
お客様がスムーズに伝えられる「共通のフレーズ」があると、口コミは一気に広がります。
アメーラトマトの場合、「甘いのに酸味がある」「まるでフルーツのようなトマト」という表現が自然に定着しました。
この“語りやすさ”が口コミの原動力になったのです。
あなたのビジネスでも、
- 「一言で言うとどんなお店か?」
- 「どんな人に勧めたいか?」
を明確にし、その言葉を発信に組み込むことが大切です。
3. “紹介しやすい仕組み”をつくる
口コミは自然発生が理想ですが、「仕組み」で促進することもできます。
たとえば:
- 紹介カードや紹介特典を用意する
- SNSでハッシュタグを設定し、投稿しやすくする
- 顧客の声をホームページで紹介する
「紹介したい」「投稿したい」と思ってもらうきっかけをつくることで、口コミは広がりやすくなります。
自然な口コミは、“小さな仕掛け”から生まれる。
紹介は“信頼のリレー”である
口コミが「体験の共有」だとすれば、紹介は「信頼のリレー」です。
お客様が自分の信用をかけて、あなたのビジネスを他人に勧めてくれる。
これほど価値のあるマーケティングはありません。
紹介が増えるということは、
「この人(この店)なら紹介しても安心」と思われている証拠。
つまり、紹介数は“信頼の量”でもあるのです。
まとめ ─ 語られるブランドへ
スモールビジネスが目指すべきは、“広告で知られるブランド”ではなく、“語られるブランド”です。
- 感情を動かす体験をつくる
- 語りやすいメッセージを整える
- 紹介しやすい仕組みを用意する
アメーラトマトのように、口コミによって広がるブランドは、広告費を使わずとも自然に成長していきます。
そして何より、“信頼される努力”を続けていること自体が、最大のブランド力なのです。
次回は「第13回:ブランドを守る ─ 信頼を損なわないためのルール」で、
口コミで広がったブランドを“継続して信頼される存在”に保つためのポイントを解説します。
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