はじめに
前回、「スモールビジネスのブランドストーリー」では、
ブランドは“想いを伝える物語”であるとお伝えしました。
今回はその続きとして、あなた自身のビジネスの物語を実際に書き出すステップを紹介します。
特別な文才は不要です。
「どんな想いで始めたのか」「誰を喜ばせたいのか」──その“心の原点”を言葉にすることが目的です。
岩崎邦彦先生もこう強調しています。
「ストーリーは、経営の言語化である。語ることで、理念が明確になる。」
ストーリーブランディングの基本構成
まず、ブランドストーリーの骨格を理解しましょう。
多くの成功事例に共通するのが、次の5つの流れです。
- 主人公(誰の物語か)
- きっかけ(なぜ始めたのか)
- 困難(何が課題だったか)
- 挑戦(どう乗り越えたか)
- 未来(これからどうしたいか)
この流れをもとに、自社のストーリーを整理していくと、自然と“伝わる物語”になります。
Step 1:主人公を定める
まず、「この物語の主役は誰か?」を明確にしましょう。
それは代表者でも、チーム全体でも、顧客でも構いません。
ただし、人が登場することが大切です。
商品だけの話は“説明”になってしまい、感情が動きません。
例:
主人公:地域のパン屋を営む夫婦。
目標:「お客様の朝を少し幸せにする」パンを届けたい。
Step 2:きっかけを思い出す
「なぜこの仕事を始めたのか?」
「何が原動力だったのか?」を掘り下げます。
きっかけには、必ず“感情の瞬間”があります。
例:
「以前勤めていた店で、急いで焼いたパンをお客様が笑顔で受け取った。その瞬間、“パンで人を幸せにできる”と気づいた。」
こうした原体験が、ブランドの“魂”になります。
Step 3:困難と挑戦を書く
物語に深みを出すためには、困難を正直に描くことが大切です。
「最初は売れなかった」「資金が足りなかった」「周囲に理解されなかった」──
どんな小さな苦労でも構いません。
その上で、「どう乗り越えたか」を書きましょう。
それが、ブランドの信頼を支えるエピソードになります。
例:
「初めの半年はお客様が少なかった。でも、毎朝笑顔で挨拶を続けたら、“この店は元気をくれる”と言ってくれる常連さんができた。」
Step 4:顧客の登場シーンを描く
ブランドは、顧客との関係の中で育ちます。
ストーリーの中にも、お客様の存在を必ず登場させましょう。
例:
「ある日、常連のお客様が“ここのパンを贈り物にしたら涙を流して喜ばれた”と言ってくれた。その瞬間、自分の仕事の意味を実感した。」
お客様の声や感謝の言葉は、“ブランドの鏡”になります。
Step 5:未来を語る
最後に、「これからどうしたいか」を明確に描きましょう。
未来のビジョンを語ることで、読者(顧客)は“応援したい気持ち”になります。
例:
「この町で100年続くパン屋になるのが夢。いつか子どもたちが“あの店のパンで育った”と言ってくれるように。」
未来を語ることは、ブランドに“希望の物語”を与えることです。
まとめ ─ 書くことでブランドが生まれる
ストーリーブランディングとは、自社の理念を言葉にし、共感に変えるプロセスです。
- 主人公を定める
- きっかけを掘り下げる
- 困難と挑戦を書く
- 顧客を登場させる
- 未来を語る
この5ステップを実践すれば、あなたの会社だけの“ブランド物語”が形になります。
「小さな会社には、小さな会社にしか語れない物語がある。」
─ 岩崎邦彦
次回は、「第17回:ストーリーを伝えるデザイン ─ 見た目で共感を生む仕掛け」で、
この物語をどのように“デザインやビジュアル”で表現するかを紹介します。
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