はじめに
スモールビジネスが失敗する最大の理由のひとつは、「誰に向けているか」があいまいなことです。
岩崎邦彦先生は著書『スモールビジネスマーケティング』の中でこう述べています。
「小さな会社は、“すべての人”に向けた瞬間に、誰からも選ばれなくなる。」
つまり、“顧客を絞ること”こそが生き残る戦略です。
限られた資源で戦うスモールビジネスにとって、
「誰に、何を、どう伝えるか」を明確にすることが、マーケティングの出発点なのです。
「誰に売るか」を決めることが、経営戦略になる
大企業は「市場を広げる」戦略を取りますが、
スモールビジネスは逆に「市場を絞る」ことで強くなります。
たとえば、
- “若い女性向け”のケーキ屋ではなく、「30代働く女性が一息つける午後3時のケーキ」
- “地域の美容室”ではなく、「40代以上の髪質に特化したケアサロン」
- “ペット用品店”ではなく、「老犬の健康を守る専門ショップ」
このように「誰に向けるか」を具体化することで、ブランドの存在意義が明確になります。
絞ることは、捨てることではなく、“深く刺さるための選択”である。
スモールビジネスが絞るべき3つの視点
1. 年齢・性別ではなく、“価値観”で区切る
「女性向け」「シニア向け」といった分類では、顧客の本質はつかめません。
本当に見るべきは、“どんな価値を求めている人か”です。
たとえば、
- 「効率より、心地よさを大切にする人」
- 「他人と違うものを選びたい人」
- 「地域とのつながりを重視する人」
この“価値観セグメント”を明確にすると、メッセージやデザイン、価格の伝え方まで一貫性が生まれます。
2. “既存顧客”から理想の顧客像を見つける
新規ターゲットを想像で決めるのではなく、
今の顧客の中から“理想の顧客”を発見することが近道です。
たとえば、あなたの商品を一番気に入ってくれているお客様に注目してください。
- どんな価値を感じているか?
- なぜあなたを選んだのか?
- どんな言葉で他人に紹介しているか?
この分析から、「共感してくれる層=最も大切にすべき顧客層」が見えてきます。
理想の顧客像は、最も熱心なファンの中にいる。
3. “選ばれる理由”を顧客の言葉で表現する
ターゲットを絞ったら、次に「なぜ選ばれるのか」を顧客目線で明確にします。
このとき重要なのは、“企業の言葉”ではなく“お客様の言葉”で語ること。
たとえば:
- 「安い」ではなく → 「安心して任せられる」
- 「早い」ではなく → 「時間に余裕ができる」
- 「丁寧」ではなく → 「自分のことを分かってくれる」
アメーラトマトの顧客も、“高糖度”ではなく「贈った人が笑顔になった」と語ります。
ブランドが選ばれるのは、“機能”ではなく“感情”なのです。
ターゲットを絞ることの心理的抵抗を乗り越える
「顧客を絞ると、売上が減るのでは?」──
多くの経営者が最初に抱く不安です。
しかし実際には、絞るほど紹介が増え、口コミが強くなるのです。
なぜなら、お客様が「誰に勧めたら喜ばれるか」を明確に想像できるようになるからです。
岩崎先生は講義でこう語りました。
「狭く深く掘ることが、やがて広く伝わる。」
まとめ ─ “誰に届けるか”がブランドのすべて
スモールビジネスの成長を決めるのは、商品ではなく“顧客の定義”です。
- 年齢や性別ではなく価値観で区切る
- 理想の顧客は既存顧客の中にいる
- 選ばれる理由を顧客の言葉で表現する
ターゲットを明確にすると、価格・デザイン・発信・体験──
すべてのマーケティング施策が一貫します。
「誰に売るかを決めることが、ブランドを育てる第一歩である。」
次回は、「第23回:ポジショニング戦略 ─ “なぜあなたを選ぶのか”を明確にする」で、
ターゲットに“選ばれる理由”をさらに具体的に構築していきます
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