はじめに
商品やサービスの品質だけで勝負できる時代は終わりました。
いま必要なのは、「お客様の頭の中でどんな存在になるか」を設計することです。
岩崎邦彦先生はこのように述べています。
「ポジショニングとは、顧客の記憶の中に“居場所”をつくることである。」
つまり、競争相手を意識するよりも、“自分がどんな印象で覚えられるか”を意図的に設計する──それがポジショニング戦略です。
ポジショニングとは「選ばれる理由」を言語化すること
ポジショニングとは、単に「差別化」ではありません。
“どんな人が、どんな理由であなたを選ぶのか”を明確にすることです。
たとえば、
- 同じパン屋でも「毎朝焼きたてで幸せを届ける店」
- 同じ美容室でも「40代女性の髪質改善に特化したサロン」
- 同じカフェでも「働く人が5分でリセットできる癒しの空間」
こうした“具体的な印象”を持たれることが、ポジショニングの成功です。
「顧客の頭の中に、“○○といえばこの店”をつくれたら勝ち。」
ポジショニングを決める3つの軸
1. 「誰に」──ターゲットの明確化
ポジショニングの出発点は、前回のテーマ「顧客セグメント戦略」です。
“誰に”向けたブランドかを絞ることで、他社との比較を避けられます。
たとえば、
「若者向けのオシャレなカフェ」ではなく、
「子育て中のママが安心してくつろげるカフェ」と定義すれば、競合は一気に減ります。
2. 「何を」──提供価値の焦点
次に、「何を提供しているブランドなのか」を明確にします。
ここで大切なのは、機能的な価値(安い・便利)ではなく、“情緒的な価値”を定義すること。
- 「健康を支える食品」より → 「家族の笑顔を守る食卓」
- 「早く終わるサービス」より → 「時間のゆとりを届ける体験」
アメーラトマトも、「甘いトマト」ではなく「愛されるトマト」として感情価値を打ち出しました。
機能ではなく、“感情”で記憶に残る。
3. 「なぜ」──選ばれる理由の物語
最後に、「なぜその価値を提供できるのか」を伝えます。
この“理由”が、ブランドの信頼を支える核になります。
たとえば、
- 「代々受け継がれた製法だから」
- 「地域の素材を守るために作っているから」
- 「1人ひとりの声を聞いて改善してきたから」
アメーラトマトも、「糖度を上げるために水を極限まで抑える」という“理由のある技術”が、
“おいしさ”という価値の裏づけになっています。
スモールビジネスに必要な「一点突破」の発想
ポジショニングのポイントは、“あれもこれも”を狙わないこと。
小さな会社が取るべきは、「一点突破・全方位浸透」です。
ひとつの強みを徹底的に磨くことで、その分野では“代わりがいない存在”になれます。
たとえば:
- コーヒー専門店 → 「豆を自家焙煎する職人の店」
- 靴修理店 → 「大切な一足を長く履かせる匠の店」
- コーチング → 「50代からの“好き”を形にする起業支援」
まとめ ─ “記憶に残る位置”をつくる
スモールビジネスのポジショニング戦略は、次の3つの問いに答えることから始まります。
- 誰に向けたブランドか?
- どんな価値を提供しているか?
- なぜそれを提供できるのか?
この3つを言語化できれば、お客様の頭の中に“あなたの位置”が生まれます。
「ポジショニングとは、戦う場所を決めることではなく、“覚えられる理由”をつくること。」
次回は、「第24回:競合との差別化戦略 ─ 真似されない“独自性”のつくり方」で、
ポジショニングをさらに進化させ、“唯一無二の強み”を磨く方法を解説します。
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