第3回:会社員時代の経験を“資産”に変える方法
■経験は「過去の記録」ではなく「未来の材料」
50代で起業を考えるとき、多くの人が口にするのが、
「これといった特技がない」「新しいことを始める自信がない」という言葉です。
しかし、私は常にこう答えます。
「あなたの経験こそ、誰かにとっての“価値”です。」
会社員時代に積み上げてきた仕事は、単なる“履歴”ではありません。
それは、課題を解決してきた知恵と信頼の集積です。
起業とは、それを新しい形で“社会に再利用”することでもあります。
■ステップ1:仕事の棚卸しをしてみよう
まず最初にやるべきは、「仕事の棚卸し」です。
履歴書ではなく、“価値提供の記録”として書き出してみましょう。
①やってきたこと(事実)
部署や職種、担当業務など。たとえば:
- システム導入プロジェクトで顧客対応をした
- 店舗運営で人材育成を担当した
- 経理でコスト削減を実現した
②成果・工夫(思考)
「なぜ上手くいったのか?」「何を工夫したのか?」を書き出します。
これはあなたの“強み”を言語化する作業です。
③感謝されたこと(信頼)
同僚や上司、顧客から「ありがとう」と言われたエピソードを思い出してください。
それが、あなたが最も社会に貢献できる領域です。
■ステップ2:“業務”を“価値”に翻訳する
次のステップは、「業務」を「価値」に言い換えることです。
たとえば、
| 経験 | 翻訳後の価値 |
|---|---|
| 営業職として20年勤務 | 顧客課題を聞き出す力・信頼関係構築のノウハウ |
| 総務・経理の管理職 | 経営数字を整理し、事業を見える化する力 |
| 教育研修担当 | 人の成長を支援するコミュニケーション力 |
こうして「職種」ではなく「提供価値」で表現すると、
自分がどんな起業をすべきかが自然と見えてきます。
私自身も、セブンイレブンジャパン時代に培った「現場視点の経営支援力」と「データを使った課題発見力」が、
いまの中小企業診断士・コンサルタントとしての基盤になっています。
■ステップ3:“人脈”も立派な資産
50代の起業では、もうひとつ見逃せない資産があります。
それは、“人とのつながり”です。
- かつての同僚
- 取引先や顧客
- 地域や趣味の仲間
起業初期に最も大きな支えになるのは、この「人の信頼」です。
港区の創業支援現場でも、「昔の取引先から最初の仕事をもらった」というケースは少なくありません。
人脈を“営業リスト”としてではなく、“応援してくれる仲間”として捉えると、
関係性が自然に広がっていきます。
■ステップ4:経験を“ストーリー”にする
経験を語るとき、「自分語り」ではなく「物語」にすることが大切です。
つまり、「どんな課題があって」「どう工夫して」「どう変わったのか」。
この3つを明確にすると、聞く人に伝わります。
補助金申請や創業計画書でも、審査員が見ているのは「一貫したストーリー」です。
あなたが歩んできたキャリアを物語に変えることで、
説得力と共感が生まれます。
■“できること”の中に、“やりたいこと”はある
多くの人は「やりたいことが見つからない」と悩みますが、
実は“やりたいこと”は“できること”の延長線上にあることが多いのです。
過去の経験を振り返り、
「どんな瞬間に心が動いたか」「誰の笑顔が嬉しかったか」を思い出してください。
それが、あなたの起業テーマの種です。
■まとめ ─ 経験は、社会への贈り物
50歳からの起業は、新しいスキルを身につけることではありません。
むしろ、自分が積み重ねてきた経験を“贈り直す”ことです。
あなたの知識、努力、そして人との信頼。
それらを次の世代や地域に手渡すことが、起業の本質です。
経験は、未来を変えるための資産である。
次回は、
📘 第4回:「やりたいこと」より「できること」から始めよう
50代起業の現実的な第一歩と、“無理なく続ける起業の始め方”をお伝えします。第4回:「やりたいこと」より「できること」から始めよう。50代起業の現実的な第一歩と、“無理なく続ける起業の始め方”をお伝えします。
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