第4回:「やりたいこと」より「できること」から始めよう
■「やりたいことが分からない」という相談が最も多い
創業相談を受けていると、最も多いのがこの言葉です。
「やりたいことはあるけれど、ビジネスになるか分からない」
「そもそも、自分には何ができるのか分からない」
この悩みは決して珍しくありません。
特に50代・60代の方にとっては、「できること」と「やりたいこと」のバランスを取ることが、起業の大きな壁になります。
しかし私は、こうお伝えしています。
「やりたいこと」よりも「できること」から始めてください。
なぜなら、“できること”の中にこそ、“やりたいこと”の芽が隠れているからです。
■「できること」は、過去の延長線上にある
人は、まったく未知の分野でいきなり成功することはできません。
起業の成功率を上げる最も現実的な方法は、「過去の経験を応用すること」です。
たとえば、私が支援した方の事例です。
・元営業職 → 「営業が苦手な経営者を支援する営業代行」
・元保育士 → 「親子の居場所づくりカフェ」
・元SE → 「小規模事業者向けの業務アプリ開発」
どのケースも、“過去に培ったスキル”を少し形を変えて提供しています。
ゼロからではなく、“経験の再利用”なのです。
■「やりたいこと」だけで走ると、現実とのズレが起きる
情熱を持つことは大切です。
しかし、“やりたい”だけでは、起業は続きません。
たとえば、カフェを開きたい人が増えています。
でも実際に話を聞くと、「人とつながる場をつくりたい」「好きな空間を表現したい」など、
カフェそのものではなく“目的の形”が異なるケースも多いのです。
つまり、「カフェをやりたい」=目的ではなく手段。
まずは「何のためにそれをやりたいのか?」を深掘りすることが大切です。
その上で、現実的にできる範囲から始めるのがポイントです。
週末限定のイベント出店、レンタルスペースの活用、オンライン販売──
今は“試しながら始める”方法がいくらでもあります。
■「できること」から始めると、信頼が生まれる
起業初期に最も重要なのは、「信用」です。
補助金・融資・顧客開拓──すべて信頼関係の上に成り立ちます。
「やりたいこと」だけで突っ走ると、周囲の理解を得にくくなりますが、
「これまでの経験を活かして新しい挑戦をする」という姿勢なら、
支援機関や取引先も安心して応援してくれます。
私自身、独立した当初は“起業支援”を明確に打ち出していませんでした。
まずは中小企業診断士として、前職の経験を活かしたITと営業支援を中心に活動。
その結果、信頼が積み重なり、今の活動へと自然に発展していきました。
小さく始め、信頼を育てる。
その積み重ねがブランドをつくるのです。
■「やりたいこと」は、続けるうちに見えてくる
“好きなことで起業したい”という言葉をよく耳にします。
けれども、「好き」は最初から明確な形をしているとは限りません。
やってみて、続けてみて、感謝されて、初めて「これが自分のやりたいことだった」と気づくことも多いのです。
私が支援している経営者の中にも、最初は補助金申請を目的に起業した方が、
「お客様との会話が一番楽しい」と気づき、接客中心のビジネスに転換したケースがあります。
“やりたいこと”は、頭で考えるより、行動の中から育つ。
だからこそ、完璧な答えを探すより、まずはできる範囲で試してみることが大切なのです。
■まとめ ─ 行動が次の道をつくる
50歳からの起業は、すべてを捨てて新しく始めることではありません。
むしろ、これまでの人生で培った「できること」を起点に、
少しずつ自分の世界を広げていくプロセスです。
焦らず、比べず、自分のペースで。
“できること”を一歩ずつ積み重ねれば、いつの間にか“やりたいこと”の形が見えてきます。
起業とは、答えを探す旅ではなく、自分の可能性を育てる旅である。
次回は、
📘 第5回:「退職金・年金・副業──起業の資金をどう考えるか」
多くの方が抱える“お金の不安”について、現実的な考え方と制度の活用法をお伝えします。第4回:会社員時代の経験を“資産”に変える方法
「起業に関心がある」方へ
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そんなお悩みに、アドバイザーとして一緒に伴走します。
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私は港区で日々、創業者の伴走支援を行っています。
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