第5回:退職金・年金・副業──起業の資金をどう考えるか
■起業の最大の不安は「お金」
50代で起業を考える方から、最も多く聞く悩みがあります。
「生活費と事業資金をどう分ければいいのか分からない」
「退職金をどこまで使っていいのか不安だ」
長年会社員として安定した収入を得ていた人ほど、
起業後の“収入ゼロ期”に対する恐怖は大きいものです。
けれども、実はお金の不安は“計画の不在”から生まれることが多いのです。
まずは、感情ではなく数字で現実を見える化すること。
そこから安心と戦略が生まれます。
■「生活費」と「事業費」を分ける“ダブル財布”思考
起業準備を始めるとき、最初にやるべきはお金の仕分けです。
- 生活費(家賃・食費・保険など、家庭の支出)
- 事業費(仕入・広告・交通費など、ビジネスの支出)
この2つを明確に分けることで、「いくらまで挑戦できるか」が見えてきます。
生活費の確保を優先し、事業資金は“余力の範囲でリスクを取る”。
この設計があると、心理的な余裕がまったく違います。
起業とは、いきなり大きな投資をすることではありません。
“生活を守りながら、少しずつ広げていく”という姿勢が大切です。
■退職金は“すべて投資しない勇気”を持つ
退職金をすべて起業資金に使ってしまい、後で困るケースをよく見かけます。
最初は順調に見えても、事業が軌道に乗るまでには予想以上に時間がかかるものです。
そこで重要なのが、「安全資金を確保しておく」という考え方です。
- 最低でも1年間分の生活費を残す
- 残りの一部を「事業の試験費用」として使う
- 補助金・助成金で“実質的な投資効率”を高める
このように、退職金を「分散投資」として扱うのが理想的です。
退職金は人生の“防波堤”。
挑戦のために使うのは素晴らしいことですが、全額を事業に賭けるのは避けましょう。
“守りの資金”があるからこそ、“攻めの挑戦”ができる。
■年金・副業を「安定の柱」にする
50代からの起業では、「収入を一気に増やす」よりも「安定を維持する」方が重要です。
特に年金・副業は、精神的な安心を生む“支え”になります。
- 年金は将来の基礎収入(65歳以降)
- 副業は起業までの“つなぎ収入”
- 家族の収入も1つの安心材料
起業初期に無収入の時期が数ヶ月続いても、安定した収入の柱があれば焦りません。
焦らなければ、判断を誤らずに済みます。
私自身も、独立当初は「副業的な位置づけ」で中小企業支援を行い、
徐々に本業へと移行しました。
これはまさに、無理なく安定的に起業を軌道に乗せる理想の形です。
■補助金・助成金・融資を味方にする(最新情報)
東京都や港区には、創業を支える公的制度が非常に充実しています。
- 東京都創業助成金(上限400万円/補助率2/3)
- 港区創業・スタートアップ支援事業補助金(上限250万円/補助率2/3)
┗ 初年度上限160万円+2年目の賃借料補助あり - 日本政策金融公庫 新創業融資制度(無担保・無保証で最大3,000万円)
- マル経融資(小規模事業者対象・上限2,000万円・無担保)
これらを上手に組み合わせることで、自己資金を減らさずに事業を始めることができます。
特に港区の補助金は、広報費・ホームページ制作・賃借料なども対象となり、
「小規模事業を着実に立ち上げたい方」に最適です。
■「最初から儲けなくていい」という発想
50代起業は、20代のように急成長を狙う必要はありません。
むしろ「3年かけて育てる」くらいの気持ちで良いのです。
初年度は、信頼づくりと顧客接点の確立。
2年目から少しずつ利益を安定させ、3年目で軌道に乗せる。
このペースで考えると、焦らず確実に前進できます。
「稼ぐ」よりも「続ける」。
続ける力こそ、50代起業の最大の資産です。
■まとめ ─ 安心の上にこそ、挑戦は生まれる
50歳からの起業は、勢いよりも設計。
退職金・年金・副業・補助金を“組み合わせる”ことで、
安心をベースにした挑戦が可能になります。
「不安だからやめる」ではなく、
「不安を仕組みに変える」ことが、賢い起業準備です。
余裕がある人ほど、チャンスを掴める。
だからこそ、“守りながら攻める”設計を大切に。
📘 次回は、第6回「スキラク起業の3要素とは」。
“好き×得意×社会の交点”──守住さんのブランド理念に通じる、
50代起業の成功軸を解説します。
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私は港区で日々、創業者の伴走支援を行っています。
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