リーン・スタートアップは「融資・補助金向き」の考え方なのか
― 起業本を「読んだつもり」で終わらせない実務レビュー ―
はじめに
起業や新規事業に関する本を読み進める中で、
多くの方が一度は手に取るのが リーン・スタートアップ です。
創業相談の場でも、
- 「リーン・スタートアップは読みました」
- 「小さく始めて検証する考え方ですよね」
という声をよく耳にします。
一方で、融資や補助金の相談になると、
「リーンで進めたいのですが、まだ事業は固まっていません」
「検証中なので、数字はこれからです」
という説明になり、
評価が伸び悩んでしまうケースも少なくありません。
本書は本当に、
融資や補助金、事業計画書と相性が悪い考え方なのでしょうか。
結論から言えば、
リーン・スタートアップは「正しく翻訳すれば」実務に十分使えます。
問題は、使い方ではなく「伝え方」にあります。
リーン・スタートアップが誤解されやすい理由
リーン・スタートアップが誤解されやすい背景には、いくつかの要因があります。
「未完成で始めていい」という言葉だけが一人歩きしている
リーン・スタートアップは、
- 完璧な計画を立ててから始める必要はない
- 小さく試し、学びながら進める
という考え方を示しています。
しかし実務の場では、これが次のように誤解されがちです。
- まだ決まっていなくてもいい
- 計画が曖昧でも問題ない
- 数字は後回しでよい
これは、本書の本質とは異なります。
日本の創業融資・補助金の文脈とずれてしまう
日本の融資や補助金では、
- 事業の継続性
- 実行力
- 数字の整合性
が強く求められます。
そのため、
「試してみないと分かりません」
という説明は、
準備不足・計画不足と受け取られてしまうことがあります。
リーン・スタートアップは、
この文脈を理解した上で使う必要があります。
リーン・スタートアップの本質は「スピード」ではありません
リーン・スタートアップという言葉から、
「とにかく早く動く」「勢い重視」というイメージを持たれることがあります。
しかし、本書の本質はそこではありません。
本質は「学習を前提にした意思決定」です
リーン・スタートアップが重視しているのは、
- 仮説を立てる
- 検証する
- 結果から学ぶ
- 次の判断を下す
という 思考と判断のプロセス です。
つまり、
行き当たりばったりではなく、説明可能な意思決定を積み重ねる考え方です。
この点は、実は融資や補助金の審査と非常に相性が良い部分でもあります。
リーン思考は事業計画書のどこに使えるのか
リーン・スタートアップは、
事業計画書を「書かなくてよくする」ための本ではありません。
むしろ、
事業計画書の土台を強くするための考え方として活用できます。
事業背景・前提条件の説明に使えます
リーン思考を使うと、
- なぜこの事業に着目したのか
- どのような仮説を立ててきたのか
- どこまで検証が進んでいるのか
を、論理的に説明できます。
これは、
事業計画書の「背景」や「課題認識」を書く際に非常に有効です。
「検証済み」と「未検証」を切り分けて書けます
リーン・スタートアップの考え方を理解していると、
- すでに確認できている点
- 今後検証すべき点
を明確に分けて整理できます。
これにより、
- すべてが曖昧な計画
- 楽観的すぎる計画
になるのを防ぐことができます。
リーン・スタートアップは万能な手法ではありません
重要なのは、
リーン・スタートアップを万能な正解として扱わないことです。
向いている場面
- 顧客ニーズの不確実性が高い事業
- 新しいサービス・新市場への挑戦
- 検証を重ねながら形を作るビジネス
注意が必要な場面
- 許認可が前提の事業
- 初期投資が大きい事業
- 最初から完成度が強く求められる業種
どの事業にもそのまま当てはまるわけではありません。
まとめ:リーン・スタートアップは「説明力」を高める本です
リーン・スタートアップは、
- 計画を軽くするための本ではありません
- 準備不足を正当化するための本でもありません
「なぜそう判断したのか」を説明できるようにするための本です。
融資や補助金、事業計画書の場面では、
まだ途中であることよりも、
途中である理由と考え方が説明できるかどうか
が重要になります。
リーン・スタートアップは、
その説明力を高めるための有効な思考ツールです。
次回予告
次回は、
「MVP(最小実行製品)は創業融資でどう説明すべきか」
をテーマに、
- MVPが誤解されやすい理由
- 事業計画書での正しい位置づけ
を実務視点で解説します。
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