MVP(最小実行製品)は創業融資でどう説明すべきか
― 「試作品です」が評価を下げてしまう理由 ―
対象書籍:
リーン・スタートアップ
シリーズ:
起業本を「読んだつもり」で終わらせない実務レビュー
はじめに
リーン・スタートアップを読んだ方の多くが、
次の言葉を一度は使ったことがあるのではないでしょうか。
「まずはMVP(最小実行製品)から始めたいと考えています」
考え方としては正しいのですが、
創業融資や補助金の場では、この説明がそのまま評価を下げてしまう
ケースが少なくありません。
- 「まだ完成していない事業なのですね」
- 「収益性はこれからということですか」
- 「本格展開の見通しが見えません」
このように受け取られてしまうのです。
この記事では、
MVPという考え方を否定せずに、どう説明すれば評価を落とさないのか
を実務目線で整理します。
MVPがそのままでは通用しない理由
「最小」という言葉が誤解を生む
MVPは「Minimum Viable Product」の略で、
顧客価値を検証するための最小単位を意味します。
しかし、融資や補助金の文脈では、
- 最小=未完成
- 試作品=準備不足
- 検証中=見通し不明
と受け取られがちです。
ここで問題になるのは、
MVPそのものではなく、説明の仕方です。
審査側が見ているのは「初期形態」ではありません
金融機関や審査員が知りたいのは、
- この事業は最終的にどんな形になるのか
- そこに至るまでの道筋は描けているのか
- なぜ今、この形から始めるのか
という点です。
MVPだけを切り取って説明してしまうと、
事業全体の姿が見えなくなるのです。
MVPは「事業の初期形態」として位置づけます
MVPは単体で説明しないことが重要です
実務でMVPを使う場合、
次のような説明が必要になります。
- MVPは事業全体のどの段階か
- 何を検証するための形なのか
- 次にどの段階へ進む予定なのか
つまり、
MVPを「途中経過」として位置づけることが重要です。
「段階的に展開する事業」として説明します
MVPを使う場合は、
- 初期段階(MVP)
- 改良・拡張段階
- 本格展開段階
というように、
事業の成長プロセスをセットで説明します。
これにより、
- なぜ最初は小さく始めるのか
- どこで収益性を高めるのか
が伝わりやすくなります。
事業計画書でのMVPの正しい書き方
MVPは「事業内容の一部」として書きます
事業計画書では、
MVPを独立した概念として強調しすぎない方が安全です。
- 「MVPを作ります」ではなく
- 「初期段階では〇〇の形で提供します」
という書き方をします。
あくまで、
事業内容の具体像の一部として記載します。
「なぜこの形なのか」を説明します
重要なのは、
- なぜフルスペックではないのか
- なぜこの機能・この提供方法なのか
を説明できることです。
ここで初めて、
MVPは「合理的な判断」として評価されます。
将来像との接続を必ず書きます
MVPを使う場合、
将来像を書かないと評価は上がりません。
- 最終的にどのようなサービスになるのか
- どのタイミングで拡張するのか
- 収益モデルはどう変化するのか
MVPはゴールではなく、スタート地点であることを明確にします。
MVPが有効な事業・注意が必要な事業
MVPが有効なケース
- IT・Webサービス
- サブスクリプション型ビジネス
- 顧客ニーズの検証が重要な事業
注意が必要なケース
- 許認可が前提の事業
- 安全性・品質が最初から求められる業種
- 初期投資が大きい設備型ビジネス
すべての事業に
MVPが適しているわけではありません。
補助金申請でのMVPの考え方
補助金の場合、
MVPという言葉自体は使わなくても構いません。
重要なのは、
- 実証・検証の位置づけ
- 検証結果をどう次に活かすか
- 事業効果の測定方法
を説明できていることです。
補助金では、
「試すこと」よりも「その後どうするか」が評価されます。
まとめ:MVPは「小ささ」ではなく「設計」で評価されます
MVPは、
- 未完成な事業を正当化する言葉ではありません
- 準備不足を隠すための概念でもありません
事業を合理的に立ち上げるための設計思想です。
創業融資や補助金の場では、
MVPそのものより、
なぜその形を選び、どこへ向かうのか
が問われます。
MVPは、
事業全体のストーリーの中で説明してこそ意味を持つのです。
次回予告
次回は、
「学習している事業」を事業計画書でどう伝えるか
をテーマに、
「まだ途中です」を評価につなげる方法リーン・スタートアップは「融資・補助金向き」の考え方なのか
仮説・検証・判断の書き方
を解説します。
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