「学習している事業」を事業計画書でどう伝えるか
― 「まだ分かりません」が評価を下げる理由 ―
対象書籍:
リーン・スタートアップ
シリーズ:
起業本を「読んだつもり」で終わらせない実務レビュー
はじめに
リーン・スタートアップの中核にある考え方が
「学習(Learning)」 です。
しかし、創業融資や補助金の相談現場では、
この「学習」という言葉が、次のように翻訳されてしまうことがあります。
「まだ分かっていない」
「様子を見ながら決めたい」
「計画が固まっていない」
結果として、
- 評価が伸びない
- 面談で突っ込まれる
- 計画の信頼性が下がる
という状況が起きがちです。
この記事では、
リーン・スタートアップでいう「学習」を、どうすれば事業計画書で“評価される形”に変えられるのか
を実務目線で整理します。
リーン・スタートアップにおける「学習」とは何か
学習とは「経験」ではありません
リーン・スタートアップにおける学習とは、
- たくさん行動した
- 試行錯誤した
- 経験を積んだ
という意味ではありません。
本書でいう学習とは、
仮説に対して、検証を行い、判断を更新することです。
つまり、
- 仮説があったのか
- それをどう検証したのか
- 何が分かり、何が分からなかったのか
を説明できて、初めて「学習」と言えます。
審査側が見ているのは「判断の質」です
融資や補助金の審査では、
- 正解だったか
- 失敗したか
よりも、
なぜそう判断したのか
が重視されます。
学習とは、
判断の質を高めているかどうかの証拠でもあります。
「学習している」と伝わらない計画書の特徴
結果だけを書いてしまっている
多くの計画書では、
- 「〇〇を実施しました」
- 「反応は良好でした」
という結果だけが書かれています。
これでは、
- 何を仮説としていたのか
- どこが検証ポイントだったのか
が伝わりません。
仮説と検証がつながっていない
- 仮説は仮説
- 行動は行動
- 数字は数字
と、
点で書かれている計画書も少なくありません。
この状態では、
「学んでいる事業」には見えません。
学習プロセスを文章で説明する方法
基本は「仮説 → 行動 → 結果 → 判断」です
事業計画書に学習を落とす際は、
次の流れを意識します。
- どのような仮説を立てたのか
- その仮説を検証するために何をしたのか
- どのような結果が得られたのか
- その結果をどう判断したのか
これだけで、
「考えて動いている事業」に変わります。
失敗は「判断材料」として書きます
失敗を書いてはいけない、ということはありません。
重要なのは、
- 何が想定と違ったのか
- その結果、何を修正したのか
を説明できているかどうかです。
失敗がある計画書の方が、
現実を見ていると評価されることもあります。
次の一手が見えるように書きます
学習は、
次の行動につながって初めて意味を持ちます。
- この結果を踏まえて、次に何をするのか
- どの点を優先的に検証するのか
ここまで書けていると、
「途中でも前に進んでいる事業」として評価されやすくなります。
補助金申請での「学習」の活かし方
補助金では、
- 実証
- 検証
- 効果測定
が重要なキーワードになります。
リーン・スタートアップの学習プロセスは、
- なぜこの取り組みを行うのか
- 何を検証するのか
- 成果をどう評価するのか
を説明する上で、非常に相性が良い考え方です。
「学習している事業」と「迷っている事業」の違い
両者の違いは、
説明できるかどうかです。
- 学習している事業
- 仮説がある
- 判断の理由がある
- 次の行動が決まっている
- 迷っている事業
- 何が分からないのか分からない
- 判断基準がない
- 次の一手が曖昧
事業計画書では、
この差がはっきり表れます。
まとめ:「学習」は計画を弱くするものではありません
リーン・スタートアップにおける学習は、
- 計画を軽くするものではありません
- 未完成を正当化する言葉でもありません
判断の積み重ねを説明可能にするための考え方です。
創業融資や補助金の場では、
どこまで分かっていて、
どこからが検証中なのかを説明できること
が重要になります。
「学習している」という状態を、
評価される計画書の言葉に変えることができれば、
リーン・スタートアップは実務で大きな武器になります。
次回予告
次回はいよいよ最終回、
「リーンを言い訳にしない事業計画の作り方」 をテーマに、
- 計画性と柔軟性の両立
- 最低限決めるべきこと
- 実行力が伝わる計画書の条件
を解説します。
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