― 起業の科学を融資・補助金で誤解されないために ―
― 計画性と柔軟性は両立できます ―
対象書籍:
起業の科学
シリーズ:
起業本を「読んだつもり」で終わらせない実務レビュー
はじめに
『起業の科学』を読んだ方の多くが、
「仮説検証が大事」という言葉を強く意識するようになります。
一方で、創業融資や補助金、事業計画書の場面になると、
次のような説明をしてしまうケースが少なくありません。
「まだ仮説検証中なので、事業は完全には固まっていません」
「これから検証していく段階です」
この説明は、
本人の意図とは逆に、評価を下げてしまうことがあります。
この記事では、
『起業の科学』でいう仮説検証を、
融資・補助金・事業計画書の文脈でどう“翻訳”すべきかを整理します。
仮説検証が誤解されやすい理由
「仮説」という言葉が不安を与えてしまう
仮説検証という言葉は、
起業家側から見ると前向きな響きを持ちます。
しかし、審査側から見ると、
- 仮=まだ決まっていない
- 検証中=準備が途中
- 未確定=見通しが弱い
という印象につながりやすいのが実情です。
ここで問題になるのは、
仮説検証という考え方そのものではなく、伝え方です。
日本の融資・補助金は「説明責任」を強く求めます
融資や補助金では、
- なぜこの事業なのか
- なぜこの方法なのか
- なぜこの数字なのか
といった 理由の説明 が重視されます。
「これから検証します」という説明だけでは、
この説明責任を果たしたことにはなりません。
審査側が見ているのは「仮説」ではなく「判断」です
『起業の科学』の仮説検証で本当に重要なのは、
仮説そのものではありません。
重要なのは、
- なぜその仮説を立てたのか
- どこまで検証できているのか
- その結果、どんな判断をしたのか
という 判断の積み重ね です。
審査側は、
正解だったかどうか
よりも、
どのように考えて、どう判断しているか
を見ています。
仮説検証を「評価される説明」に変える考え方
仮説検証は「思考プロセス」として示します
事業計画書や面談では、
次の流れが説明できていることが重要です。
- どんな仮説を立てたのか
- なぜその仮説に至ったのか
- どのように検証したのか
- その結果、何が分かったのか
これが整理されていれば、
仮説検証は 準備不足ではなく、思考の裏付け になります。
「検証中」は、書き方次第でマイナスになりません
検証が途中であること自体は、
必ずしもマイナスではありません。
問題なのは、
- 何が分かっていないのか分からない
- 次に何をするのか決まっていない
状態です。
事業計画書では、
「〇〇については△△まで検証済みで、
現在は□□の検証を進めています」
と書ける状態を目指します。
仮説検証は事業計画書のどこに使うのか
① 事業背景・課題設定の根拠として使います
事業計画書で最初に問われるのが、
- なぜこの事業なのか
- なぜ今なのか
という点です。
ここに、仮説検証が活きます。
- 市場に関する仮説
- 顧客課題に関する仮説
- ヒアリングや調査による裏付け
これらを整理して書くことで、
思いつきではない事業であることを説明できます。
② 顧客・提供価値の説明に使います
顧客設定が弱い計画書は、
融資・補助金ともに評価が伸びません。
仮説検証を通じて、
- 誰の
- どんな課題が
- どの程度存在するのか
を言語化できていれば、
事業内容の説得力は大きく高まります。
③ 数字の前提条件を説明するために使います
売上計画や収益モデルでは、
- なぜこの単価なのか
- なぜこの客数なのか
が必ず問われます。
仮説検証は、
数字の前提条件を説明するための材料になります。
仮説検証を「未完成」に見せないための整理ポイント
検証済みと未検証を分けて書きます
すべてを確定させる必要はありませんが、
- どこまで固まっていて
- どこが今後の検証対象なのか
は明確にする必要があります。
これができていないと、
計画全体が曖昧に見えてしまいます。
未検証部分は「リスク」として整理します
融資や補助金では、
リスクを認識しているかどうかも評価対象です。
未検証部分は、
- 不確実性
- 想定リスク
- 対応方針
として整理することで、
マイナス評価を防ぐことができます。
まとめ|仮説検証は「決めなくていい理由」ではありません
『起業の科学』の仮説検証は、
- 事業を曖昧にするための考え方ではありません
- 計画を先送りするための理論でもありません
判断を説明できるようにするための考え方です。
融資・補助金・事業計画書の場面では、
仮説検証を
「まだ決まっていない状態」に見せないこと
が重要になります。
仮説検証を
思考の裏付けとして提示できれば、
それは実務で非常に強い武器になります。
次回予告
次回は、
「顧客仮説が弱い事業計画書は、なぜ通らないのか」
をテーマに、
- 顧客設定の典型的な失敗
- 起業の科学を使った顧客整理の考え方
を解説します。
「起業に関心がある」方へ
起業を考えているが迷っている。具体的にどうしたらよいかわからない。。。
そんなお悩みに、アドバイザーとして一緒に伴走します。
必要なのは、「少しの整理」と「最初の一歩」です。
私は港区で日々、創業者の伴走支援を行っています。
もし「自分の想いをどう形にすればいいか分からない」「制度の使い方がよくわからない」といった不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

