―「普通に良い」ダイニングバーの事例から考える―
起業相談を受けていると、よく聞かれる質問があります。
「やはり差別化しないと成功しませんよね?」
ほとんどの起業の教科書にも「差別化が重要」と書いてあります。
これから創業する方は「何か尖った特徴がないとダメなのでは」と不安になります。
SNSで話題になるような強烈なコンセプトや、他にはない唯一無二の商品がなければ生き残れないのではないか、と。
しかし、私が支援したあるダイニングバーの事例は、その問いに対して少し違う答えを示してくれました。
そのお店は、料理も酒も内装も接客も、どれも「普通に良い」お店です。
特別に高級でもなければ、映える仕掛けがあるわけでもない。奇抜なメニューもありません。
あえて挙げるなら、こだわりの果実を使ったサワー。そして家族的な洋風料理。どこか懐かしく、ほっとする味わいです。
1年前に開業し、派手な広告も打たず、地道に営業を続けてきました。すると徐々に顧客が定着し、最近では週に2~3回来店する常連客も現れています。
ある日、その常連の方がこうおっしゃいました。
「10年以上この近くに住んでいるけど、こんな店が欲しかったんだよね。」
私はこの言葉が強く印象に残りました。
「こんな店」とは何なのか。
具体的な説明はありませんでした。
おそらく、料理が飛び抜けているわけでも、価格が圧倒的に安いわけでもない。
しかし、週に何度も通いたくなるほど居心地がよく、気を張らずに過ごせる。まるで実家のような安心感のある店、という意味だったのではないかと思います。
ここから学べることは明確です。
差別化とは、必ずしも“尖ること”ではないということです。
起業の世界では「他にはない強みを持て」「唯一無二になれ」と言われます。
しかし実際の市場では、「普通においしい」「普通に居心地が良い」という価値が不足していることも多いのです。
周囲に“安心して通える店”がなければ、それだけで十分な差別化になります。
大切なのは、競合よりも目立つことではなく、顧客の空白を埋めることです。
このダイニングバーは、「奇抜さ」ではなく「安定感」を提供しています。
料理の味はぶれない。接客は自然体。価格も良心的。無理をしない経営姿勢が、そのまま店の空気感になっています。
そしてそれが、「こんな店が欲しかった」という言葉につながったのだと思います。
これから創業する方にお伝えしたいのは、肩に力を入れすぎなくてもよいということです。
もちろん、自分の強みを言語化することは重要です。しかし、それは必ずしも派手である必要はありません。
・誠実に続けられること
・安定して提供できること
・顧客がほっとできること
これらは立派な強みです。
むしろ、小規模事業においては「長く続けられる普通」が最も強い武器になります。
無理に尖らせたコンセプトは、オーナー自身が疲れてしまうこともあります。
差別化とは、他と違うことを無理に作ることではなく、「自分が自然体で提供できる価値」を磨き続けることなのではないでしょうか。
このダイニングバーの成功は、そのことを静かに教えてくれています。
起業の成功に、必ずしも派手な差別化は必要ありません。
普通においしく、普通に居心地が良い。
それを地道に積み重ねることが、結果として“選ばれる理由”になるのです。
これから創業する皆さんも、「何で尖るか」よりも、「誰にとって安心できる存在になるか」を考えてみてください。
市場にはまだまだ、「こんな店が欲しかった」と言ってもらえる余地が残っています。
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