「この商品、おいしいですか?」
新しい食品を試してもらうとき、まず聞きたくなる質問です。ただ、「おいしい」という答えだけでは、次に何を変えればよいか分かりません。反対に「好みではない」と言われても、その理由を聞かなければ、改良すべき点を見極められません。
先日参加した海外展開に関するセミナーでは、訪日客に商品を試してもらい、対話を通じて商品開発に生かす事例が紹介されました。印象的だったのは、評価そのものより、評価に至った理由を聞くという姿勢です。
同じ「塩辛い」でも、次の一手は違う
セミナーでは、台湾からの訪日客に食品を試してもらったところ、辛味噌について「少し塩辛い」という意見が複数寄せられた事例が紹介されました。企業はその声を商品開発部門に共有し、海外向けの商品を検討することにしたそうです。
ここで、すぐに塩分を減らせばよいと決めるのは早いかもしれません。
単独で味見したから塩辛く感じたのか。料理に使っても、なお塩辛いのか。現地では、どんな食品と比べられるのか。使い方によっては、味を変えるよりも、適量や調理方法の伝え方を変える方がよい可能性もあります。
「塩辛い」は大切な声です。しかし、それだけでは改良の方向は一つに決まりません。「どのように使うと、そう感じますか」と一歩踏み込んで聞くことで、次の試作で確かめることが見えてきます。
商品そのもの以外にも、見直す点がある
別の事例では、乳製品のパッケージが、台湾の方にはアルコール飲料のように見えたそうです。日本の作り手にとっては意外な反応でも、買い手がそう受け取れば、手に取る前に購入候補から外れてしまうかもしれません。
この場合、飲料の味を変えても問題は解決しません。見直すべきなのは、パッケージの色や形、商品名、何の飲料かを伝える表示かもしれません。
商品への評価を聞くときは、試食後の感想に加えて、試す前の反応にも目を向けたいところです。
「最初に何の商品だと思いましたか」
「誰が飲む商品に見えますか」
「どこで売っていると探しやすいですか」
こうした質問から、作り手の想定と買い手の受け止め方の違いが見えてきます。
正解を説明する前に、相手の考えを聞く
自社の商品には、開発の経緯やこだわりがあります。そのため、「これはこう使うものです」「この包装には理由があります」と、先に説明したくなります。
ただ、説明を受けた後では、初めて商品を見たときの率直な反応を聞きにくくなります。最初は使い方を教えず、相手が何を想像するかを聞いてみる。その後で商品の意図を伝え、反応がどう変わるかを確かめる。二段階に分けると、伝え方の課題も見つけやすくなります。
たとえば日本では「箸置き」として売っている品物でも、海外のお客様は飾りとして使うかもしれません。作り手が決めた用途に答えを誘導してしまうと、その発見を逃します。
セミナーで紹介されたお麩の例も同様です。「味噌汁に入れる食材です」と先に説明する場合と、商品を見せて「あなたなら何に使いますか」と尋ねる場合では、得られる答えが違うでしょう。
意見を、次の試作につなげる
聞き取った声は、そのまま多数決にかけるものではありません。まず、誰が、どんな場面を想像して、なぜそう答えたのかを整理します。その上で、商品について次に確かめる仮説を一つ決めます。
たとえば、辛味噌なら「料理に使う量を示せば、塩辛いという評価は変わるか」。飲料なら「表示を変えれば、アルコール飲料との誤認は減るか」。改良品や説明を再び見てもらえば、最初に聞いた声を具体的な改善につなげられます。
商品が完成してから大きく変えるのは難しいものです。試作段階で海外のお客様に見てもらえば、味、包装、用途の伝え方を検討する余地があります。
「おいしいですか?」は、会話の入口として役立ちます。その先で「なぜ」「どんな場面で」「何と比べて」と聞けるかどうかが、商品開発への生かし方を左右します。
お客様の声を聞く目的は、褒めてもらうことではありません。自分たちの想定と違う見方を知り、次の試作で何を確かめるかを決めることです。
*次回は、こうして得たお客様の声を、バイヤーとの商談で使える提案にどう変えるかを考えます。

