創業時に補助金だけを頼ってはいけない理由
私自身の失敗経験から伝えたい資金計画の大切さ
起業を考えている方から、よく相談を受けるテーマのひとつが「補助金は使えますか?」という質問です。
創業時には、店舗の内装費、ホームページ制作費、広告宣伝費、備品購入費、仕入れ資金など、さまざまなお金が必要になります。できるだけ自己負担を減らしたい。使える制度があるなら活用したい。そう考えるのは、とても自然なことです。
特に港区で創業を考えている方は、東京都や区の制度、国の補助金など、さまざまな支援策を目にする機会があります。そのため、「補助金があれば何とか始められるのではないか」と考える方も少なくありません。
しかし、創業時の資金計画を考えるうえで、補助金だけを頼りにするのは危険です。補助金は事業を後押ししてくれる有効な制度ですが、起業の土台そのものにはなりません。
このことは、私自身の失敗経験からも強く感じています。
私自身も、自己資金不足で独立をあきらめた経験があります
私は以前、セブン-イレブン・ジャパンに勤務していました。店勤務を経験した後、店舗指導員として、加盟店の売上や利益を高めるためのアドバイスをしていました。店舗運営、売場づくり、発注、商品管理、利益管理など、コンビニ経営の現場については一定の知識と経験がありました。
そのため、会社を離れた後、自分自身がセブン-イレブンに加盟して独立することを考えたことがあります。
元社員である自分なら、普通の人よりも店舗経営のことはわかっている。フランチャイズの仕組みも理解している。経営のポイントも知っている。だから、うまくやれるのではないか。今振り返ると、どこかでそう思っていたのだと思います。
ところが、実際に加盟を検討してみると、事業を始めるには相応の自己資金が必要でした。
知識や経験だけでは、事業は始められない
知識があること。経験があること。やる気があること。これらはもちろん大切です。しかし、それだけで事業は始められません。開業時に必要な資金を準備できるかどうかは、まったく別の問題です。
私はそのとき、必要な自己資金を十分に準備することができず、結果としてセブン-イレブンへの加盟を断念しました。そして、独立をあきらめ、もう一度会社員として働く道を選びました。
今思えば、元セブン-イレブン社員だったことで、少し甘く見ていたのだと思います。業界のことを知っている。店舗運営もわかっている。だから何とかなるのではないか。そんな気持ちがあったのかもしれません。
しかし、起業において大切なのは、経験や熱意だけではありません。事業を始め、売上が安定するまで持ちこたえるための資金計画が必要です。どれだけ良いアイデアがあっても、どれだけ業界経験があっても、資金が不足すれば事業は前に進みません。
補助金は「すぐにもらえるお金」ではありません
これは、補助金にも同じことが言えます。
補助金は「もらえるお金」というイメージを持たれがちですが、多くの場合、先に経費を支払い、後から補助される仕組みです。採択されたからといって、すぐにお金が振り込まれるわけではありません。
たとえば、ホームページ制作や広告宣伝に100万円かかる場合、まずはその100万円を自分で支払う必要があります。その後、実績報告を行い、認められた経費について補助金が支払われます。つまり、補助金を使う場合でも、最初に支払うための資金は必要なのです。
また、補助金は申請すれば必ず採択されるものではありません。事業内容、実現可能性、必要性、経費の妥当性などが審査されます。制度の目的と自分の事業内容が合っていなければ、どれだけ熱意があっても採択されにくくなります。
ですから、「補助金が通ったら起業する」という考え方はおすすめできません。大切なのは、「補助金がなくても最低限スタートできる計画」を立てたうえで、採択されれば事業を加速させるという考え方です。
創業時に必要なお金は3つに分けて考える
創業時に必要なお金は、大きく3つに分けて考えると整理しやすくなります。
1つ目は、開業準備のための資金です。店舗や事務所の初期費用、内装工事、備品、設備、パソコン、レジ、什器などが該当します。
2つ目は、集客や販路開拓のための資金です。ホームページ、チラシ、SNS広告、看板、名刺、パンフレット、予約サイト掲載料などです。創業時はまだ知られていない状態からのスタートなので、売上をつくるための投資が必要になります。
3つ目は、運転資金です。家賃、人件費、仕入れ、通信費、光熱費、広告費、そして生活費など、事業を継続するためのお金です。創業直後は売上が安定しないことが多いため、数か月分の運転資金を見込んでおくことが大切です。
補助金だけでは、事業は回らない
補助金の対象になりやすいのは、主に設備費や広告宣伝費などです。一方で、毎月の家賃や生活費、通常の運転資金は対象外となることも多くあります。だからこそ、補助金だけで事業を回そうとするのは危険なのです。
創業資金を考えるときは、自己資金、融資、補助金の役割を分けて考える必要があります。
自己資金は、事業の土台です。自己資金があることで、金融機関からの信用も得やすくなります。予想外の出費や売上の遅れにも対応しやすくなります。
融資は、事業を安定して立ち上げるための資金です。創業時は売上実績がないため、事業計画書の内容が重要になります。どのような顧客に、どのような商品やサービスを提供し、どのように売上をつくるのかを具体的に説明する必要があります。
補助金は、事業を後押しするための資金です。新しい販路を開拓したい、設備を導入したい、広報を強化したいといった場合には有効です。ただし、後払いであり、必ず採択されるものではないことを前提にしておく必要があります。
資金計画は、起業を長く続けるための土台です
私自身、自己資金の準備不足によって、一度は独立をあきらめました。その経験があるからこそ、創業相談の場では、補助金や助成金の話だけでなく、自己資金、融資、運転資金を含めた全体の資金計画を大切にしています。
起業は、思いだけでは続きません。経験だけでも足りません。事業を継続するためには、現実的な資金計画が必要です。
港区で創業を考えている方は、まず「いくら補助金が使えるか」ではなく、「事業を始め、軌道に乗るまでにいくら必要か」を考えてみてください。そのうえで、自己資金、融資、補助金をどう組み合わせるかを整理することが大切です。
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