第15回:値付けの基本──“適正な価格”の決め方
~安くしすぎず、高すぎず。50代起業の価格戦略~
■50代起業の最初の壁は「値付け」
創業相談の現場で、最初に悩まれるのは必ずと言っていいほど価格設定です。
特に50代の方は、
- 「高くすると申し訳ない」
- 「安い方がお客様が来てくれる気がする」
- 「自信がない」
など、心理的なハードルが非常に高い。
しかし私はこう断言します。
価格は“自分への信頼度”を最もよく表す指標である。
そしてもうひとつ。
安売りは自分を苦しめ、顧客の質を下げる。
50代起業は「効率より継続」、「量より質」。
だからこそ、適正価格を最初から設定することが成功の鍵になります。
■①“労働時間”ではなく“提供価値”で決める
多くの人が、
「1時間いくら」
という労働対価の発想で価格を決めがちです。
しかし、これは大きな間違いです。
あなたが提供しているのは、
“時間”ではなく“価値”。
たとえば、
私が1時間の相談で「事業計画の方向性」を定めると、
相談者は数ヶ月の迷いから解放されます。
このとき、
- 1時間の労働
ではなく - 数ヶ月の不安を減らす価値
を提供しているのです。
つまり、
価格は「成果」と「安心」に対してつけるもの。
労働時間ではありません。
■② 「安い=良心的」は間違い
価格を安くすると、
- 良い人に見られる
- 申し込みが増える
と思いがちですが、実際は逆です。
低価格は
- 責任感が弱いお客様が集まりやすい
- キャンセルが増える
- クレームが出やすい
- 大切に扱われない
という“負の連鎖”を生みます。
そして何より危険なのは、
自分の価値が低いと勘違いしてしまうこと。
安売りは、あなたの人生経験・専門性・努力を安く扱う行為です。
50代起業では最も避けるべき道です。
■③ 市場相場 × 自分の価値 × 継続性 で設定する
私は、価格設定は次の3つの交点で決めるべきだと考えています。
✔ ① 市場相場
同業者の価格を調べることは必須です。
相場とかけ離れると買われにくくなります。
✔ ② 自分の提供価値
経験年数、専門性、独自視点、顧客成果、
あなたにしかできない強みを反映させます。
✔ ③ 継続できるか
安すぎて疲弊する価格はダメ。
高すぎて誰も買わない価格もダメ。
「無理なく続けられて、顧客も満足できる価格」
を見つけることが大事です。
■④ 価格は「3段階」にするとうまくいく
1つの価格だけで勝負するのはNGです。
売れやすさが大きく下がります。
おすすめは、
“3つの価格帯”を用意すること。
例:
- ライト(お試し):5,000円
- スタンダード(通常):15,000円
- プレミア(徹底支援):50,000円
すると、多くの人は「中間」を選びます。
これは心理学上の“松竹梅効果”と呼ばれる現象です。
結果として、
単価の適正化・収益安定化につながります。
■⑤ 時間ではなく「パッケージ」で売る
価格は“パッケージ化”すると決めやすくなります。
例:
- 90分 × 3回の起業相談
- 初月支援パック
- プロフィール作成+事業計画作成セット
- 補助金申請サポート一式
パッケージのメリットは3つあります。
- 価値が伝わりやすい
- 時間単価ではないため、単価が上げやすい
- 顧客が成果を実感しやすい
50代起業では、
“単発の仕事より継続”
が成功につながるので、
パッケージ化は非常に相性が良い方法です。
■⑥「値上げ」は恐れずにやっていい
価格は、経験と実績が増えるほど上げるべきです。
私は独立当初、
非常に低い価格でサービスを提供していました。
しかし、
- 相談件数
- 実績
- 紹介数
- 自信
が増えるにつれて、
少しずつ価格を上げていきました。
すると、顧客の質も上がり、
仕事の満足度も高くなっていきました。
価格は、自分の成長に合わせて更新する“生きた数字”。
一度決めたら変えてはいけない、
というものではありません。
■⑦「無料」の使い方だけは慎重に
無料は悪ではありません。
むしろ、起業初期の「きっかけづくり」にとても向いています。
ただし、
無料=無制限は危険。
無料で行う場合は、
- 時間を限定する
- 回数を限定する
- 目的を明確にする
を徹底しましょう。
無料は「入口」であり、
「出口(有料)」に繋がって初めて意味があります。
■まとめ──値付けは“自分をどう扱うか”の宣言
50代起業の値付けで最も重要なのは、
金額ではなく“姿勢”です。
- 自分を安売りしない
- 提供価値で判断する
- 適正価格で自分と顧客を守る
- パッケージ化で価値を伝える
- 継続できる価格にする
- 値上げを恐れない
これらを実践するだけで、
ビジネスは安定し、
顧客の質も上がり、
何より「自分の仕事が好きになる」。
価格は、あなたがあなた自身にどれだけ価値を感じているかを示す言葉。
適正な価格をつけることは、自分を大切にする行為です。
📘 次回は
第16回:「SNSで“発信が続かない”問題の解決法」
多くの50代起業家が悩む「SNS疲れ」「継続できない」を解決する実践的メソッドをまとめます。
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